研究実績の概要 |
ヒト初代肝細胞にIFNα, IL28B, IFNα+IL28Bを処置しDNAマイクロアレイ法を用いて網羅的遺伝子発現解析を行った結果、IL28Bでのみ発現が誘導されるIL28B特異的誘導遺伝子を41個同定した。更にパスウェイ解析から、IL28BはWnt/β-catenin, Notch, VEGF, Integrinシグナルを特異的に抑制することを明らかにした。IL28B特異的誘導遺伝子の中で最も顕著に発現誘導された遺伝子がLECT2であった。LECT2は好中球遊走能、細胞増殖・分化などの機能的役割を有することが報告されているが、抗ウイルス効果やIFN応答に対する役割は不明であった。HCV感染培養細胞を用いた検討から、LECT2は抗ウイルス活性を示し、更に、興味深いことにLECT2はISGsを誘導するタンパク質であった。LECT2ノックダウン細胞ではIFNαやIL28B処置によるISGsの誘導が抑制される一方、LECT2過剰発現細胞ではIFNαやIL28BによるIFN応答性や抗ウイルス効果が増強した。LECT2の詳細な機能的役割の解明のためLECT2トランスジェニック(LECT2 Tg)マウス及びLECT2ノックアウト(LECT2 KO)マウスを作成した。これらTgマウス、KOマウスにPolyICを処置し免疫応答を解析した。その結果、LECT2 TgマウスはPolyICによる肝細胞での自然免疫応答を増強させた一方、KOマウスにおいてはその応答性を減弱させた。更に、LECT2 KOマウスにIFNを処置した結果、肝細胞におけるIFN応答性が減弱した。
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