研究課題
C型肝炎ウイルス(HCV)感染者数は本邦で200万人以上存在すると推定されている。HCV感染症は放置すると肝硬変、肝癌に進行する重大な感染症である。そのため、HCV感染がもたらす病態形成、特に持続感染と発癌メカニズムを詳細に解明し、新規治療法に繋がるための基礎研究が重要である。C型肝炎のインターフェロン(IFN)療法において、IFN応答・不応答を規定する因子としてインターロイキン28B(IL28B)の遺伝子多型(メジャー型/マイナー型)が同定された。しかしながら、IL28BがIFN応答を制御する機序は十分に解明されていない。そこで申請者は、HCV感染培養細胞やモデルマウス、臨床サンプルを用いてIL28Bの分子機構を解明することを目的とした。IL28Bにより特異的に肝細胞から分泌されるタンパク質であるLECT2を同定した。同定したLECT2は、慢性C型肝炎患者の肝組織おいて正常肝に比し有意に発現が亢進していた。この結果は、LECT2はHCV感染に伴う病体形成に何らかの役割を果たしていることを示唆する。機能的役割として、LECT2は肝細胞における自然免疫応答を強力に正に制御する機能を有していることを見出した。HCV感染による自然免疫応答はHCVのゲノムをRIG-IやMDA5, TLR3が認識することにより下流にシグナルを伝え、IFN-betaの産生を促す。siRNAを用いた実験により、LECT2はRIG-IのHCV-RNA認識機構に主に働いていることを明らかにした。更に、LECT2はIFN応答性を増強させることや、IFNによる抗ウイルス活性を増強させることを明らかにした。LECT2は、HCV感染症のみならず、他の感染症や免疫分野にも発展性が広がる可能性があり学術的に意義のある研究である。
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Journal of Infectious Diseases
巻: 1;213(7) ページ: 1096-106
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