研究課題/領域番号 |
25870268
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研究機関 | 北陸先端科学技術大学院大学 |
研究代表者 |
信川 省吾 北陸先端科学技術大学院大学, マテリアルサイエンス研究科, 助教 (50609211)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 側鎖配向 / 一軸延伸 / 複屈折 / 波長依存性 / 位相差フィルム / 応力光学則 / 添加剤 |
研究実績の概要 |
平成26年度は、セルロースエステルの側鎖配向と置換位置の関係、および配向複屈折に対する可塑剤分子の影響を調べた。 ・セルロースエステルの側鎖配向と置換位置の関係: セルロースアセテート(CTA)の置換基の位置(C2、C3、C6)による配向複屈折への影響を明らかにすることを目的として、検討を行った。CTA延伸フィルムの負の複屈折が、キシランアセテート(XylAc)を添加することで、正へ変化した。これより、XylAcの複屈折は正である。さらに,CTAの置換基が3種類(C2、C3、C6)であるが、XylAcは2種類(C2、C3)であることを踏まえると、C2、C3は正の複屈折、C6 は負の複屈折を示すと考えられる。さらに、XylAc以外のキシランエステルを添加することで、C2とC3のエステル基が変わっても、複屈折の大きさはほとんど変化しないことも判明した。 ・セルロースエステルの配向複屈折に対する可塑剤分子の影響: セルロースアセテートプロピオネート(CAP)に、可塑剤としてエステルオリゴマーを添加し、複屈折および配向状態に対する影響を調べた。CAP主鎖の分子配向度は加熱延伸時の応力によって決定されるため、温度により延伸応力を揃え、単体とブレンド中のCAP主鎖の配向度を揃え、両系で複屈折を比較した。その結果、可塑剤を添加することで、複屈折が3倍程度に増大した。赤外二色比の測定を行ったところ、可塑剤分子がCAP鎖につられて配向していることが明らかとなった。なお、複屈折の波長依存性より、CAPの側鎖の配向状態は、単一系と同程度であることも示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成25年度に引き続き、セルロース系ポリマーを用いて、複屈折特性と側鎖配向の関係を調べた。特に、3つの置換基を持つセルロースエステルと、2つの置換基を持つキシランエステルを組み合わせることにより、エステル基の置換位置による複屈折への影響を明らかにするとともに、それぞれのエステル基の配向状態も考察した。また、可塑剤を添加したセルロースエステルの複屈折と分子配向度から、主鎖と可塑剤分子の配向度を評価した。さらに、各延伸倍率における複屈折の波長依存性を比較することにより、側鎖の配向状態を議論した。 当初予定していた応力‐複屈折緩和実験や、延伸中における複屈折の波長依存性の測定については、検出器の感度調整がうまくいっていないため、各延伸倍率での複屈折測定に切り替えた。そのため、実験はほぼ予定通り実施されている。以上より、研究は順調に進んでいると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
平成26年度は、複屈折の波長依存性のデータから、いくつかの延伸倍率でのセルロースエステルの側鎖の配向状態や、置換位置による複屈折への影響について考察した。しかしながら、応力緩和実験や延伸中の複屈折の波長依存性の変化が評価できておらず、主鎖と側鎖の配向緩和時間の見積もりができていない。そこで、平成27年度は、応力緩和測定と同時に複屈折の波長依存性を測定し、主鎖と側鎖の運動性を評価する。 また、平成26年度、セルロースエステルとキシランエステルの複屈折データより、セルロースの置換位置により複屈折への影響が異なるという結果が得られた。そこで、平成27年度は、選択的にエステル基を導入したセルロースエステル単体について、複屈折測定を行い、置換基の位置による複屈折への影響を確認する。 最終的に、研究実施期間中に得られた結果を総括し、高分子側鎖の配向状態を制御することにより、新規の光学高分子材料の設計方法を示す予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
国際学会に参加を予定していたが、平成26年度は開催されず、平成27年度の開催となったため、未使用額が生じた。
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次年度使用額の使用計画 |
平成27年度に開催予定の、The 4th International Polysaccharide Conference EPNOE (European Polysaccharide Network of Excellence) 2015に参加し、平成26年度の研究成果を発表する予定である。
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