研究概要 |
クロマツは菌根性樹種であるため、健全なクロマツの生育には菌根菌との共生が必要である。そのためクロマツ林を早期再生させるには迅速な菌根共生が欠かせない。本研究では、菌根共生を促進する細菌に着目し、その細菌が生産する菌根共生促進物質を単離・同定し、機能解析することを目的としている。25年度は、ヘルパー細菌を培養する培地の選定と培養上清から生育促進物質を抽出し、粗抽出物の菌根菌に対する促進活性の確認を行った。培地の選定は、はじめに固体培地を用いて生育促進効果を確認した。その後の精製操作を簡便にする目的でグルコース, 硫酸マグネシウム, リン酸塩を基本組成とし、本試験では窒素源としてアミノ酸を用いて促進活性を検討した。アミノ酸は、アスパラギン酸, アスパラギン酸一水和物, アルギニン塩酸塩, イソロイシン, グルタミン, システイン, チロシン, トリプトファン, トレオニン, バリン, ヒスチジン, プロリン, フェニルアラニン, メチオニン, リシン塩酸塩, ロイシン, アラニン, セリンの18種を検討したところ、バリン、ロイシンを窒素源として用いることで、促進活性が確認された。特にバリンが最も促進活性を示し、バリン添加液体培地でも同様の促進活性が認められたため、本培地を用いて生育促進物質の抽出を試みた。バリン添加液体培地でヘルパー細菌を2日間振とう培養し、酢酸エチルで抽出した(pH無調整)。脱水処理後に濃縮乾固し、50%メタノール水溶液に再溶解させた。粗抽出物の検定は、バリン添加液体培地にコルクボーラーで作成した菌根菌Suillus granulatusのディスクを接種し、粗抽出物を200 μL添加して静置培養した。その結果、粗抽出物を含まない50%メタノール(コントロール)よりも添加区で有意に菌糸生育が促進されたことを確認した。物質の精製は26年度の課題とする。
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