クロマツは菌根性樹種であるため、健全なクロマツの生育には菌根菌との共生が欠かせない。そのためクロマツ林を早期再生させるには迅速な菌根共生が欠かせない。本研究では、菌根共生を促進する細菌に着目し、その細菌が生産する菌根共生促進物質を単離・同定し、機能解析することを目的としている。25年度は、ヘルパー細菌を培養する培地の選定と培養上清から生育促進物質を抽出し、粗抽出物の菌根菌に対する促進活性の確認を行った。26年度は物質の精製および機能検定を実施した。粗抽出物をSuperdex30で充填したカラムに通し、15分ごとに溶出液の採取を行ったところ、60分で溶出した画分に菌糸生育促進活性が見られた。HPLC分析、GCMS分析を進めているが現時点で物質の特定には至っておらず、引き続き物質の精製および分析条件の検討が必要である。一方で、植物病原菌に対する菌糸生育効果を有する細菌の分離を試みた。70株中49株では菌糸の生育に大きな変化は見られず、10株では菌糸を抑制する拮抗作用を示した。しかし、11株で菌糸の生育を促進する現象が確認された。シークエンス解析の結果からArthrobacter spp. (8株/11株中)が最も多く確認され、次いでCupriavidus sp.、Lysinibacillus sp.株でも確認された。27年度は、引き続きヘルパー細菌による物質の精製および物質の生育促進活性を確認するとともに、今回新たに分離した植物病原菌への生育促進効果についても対象菌株として用いて比較検討していく。
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