研究課題/領域番号 |
25870277
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研究種目 |
若手研究(B)
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研究機関 | 山梨大学 |
研究代表者 |
河田 かずみ 山梨大学, 医学工学総合研究部, 助教 (10457228)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 日本骨代謝学会優秀演題賞受賞 / ANZBMS Travel Award受賞 / medical tribune掲載 / 国際学会発表1回 / 国内学会講演発表4回 |
研究概要 |
現在までに、象牙芽細胞様細胞株KN-3細胞に一次繊毛が存在することを確認している。一次繊毛形成遺伝子であるIntraflagellar transport protein (Ift) 88をKN-3細胞においてノックダウンすると、象牙芽細胞マーカー遺伝子であるdentin sialophosphoprotein (DSPP)の発現増加、alkaline phosphatase (ALP)の活性抑制が確認された。Ift88ノックダウン時のhedgehog (Hh)シグナル経路については、変動が認められなかったが、古典的WNTシグナル経路については活性が亢進され、非古典的WNTシグナル経路については、反対に、活性が抑制されていることが明らかになった。更に、非古典的WNTシグナル経路をPI3K inhibitorであるLY294002の添加による抑制では、Dspp発現変動、ALP活性はIft88ノックダウン時とは反対の変動を示した。一方、古典的WNTシグナル経路を、WNT3Aリコンビナントタンパク質やglycogen synthase kinase (GSK) 3β阻害剤であるSB216763の添加により活性化したところ、ft88ノックダウン時と同様の変動を示した。その際、有繊毛率が減少することも明らかとなった。更に、4日齢のラットの上顎臼歯より単離した歯髄細胞を象牙芽細胞分化培地で培養し、経時的に一次繊毛を有する細胞数の計測も行った。その結果、象牙芽細胞分化の進行と共に有繊毛率は上昇することが明らかとなった。 以上の結果から、象牙芽細胞の分化は、一次繊毛により制御される可能性を考えている。また、一次繊毛による象牙芽細胞分化制御は、古典的WNTシグナルを介する可能性が強く示唆された。更には、この経路が翻って一次繊毛の形成、それ自体にも影響を与える可能性も示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
①例えば、歯髄細胞の長期培養など、長期の時間が必要な実験が多い。 ②石灰化したサンプルの回収が通常の回収方法では困難であり、石灰化サンプルに対応した回収方法を持ってしてでも、失敗することがある。 ③現在までなされている、詳細な研究の数が少なく、例えば、DSPPに対する抗体などの適切な研究材料の探索に時間が必要である。 ④また、前述のように、参考に出来る先行論文が少なく、現在までに全く報告のない新規の内容を明らかにしようとしているため、何度も再試が必要である。 これらの理由により、当初の目標よりも研究進行度がやや遅れている。
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今後の研究の推進方策 |
① 現在までに、象牙芽細胞への分化が進行すると共に有繊毛率は上昇することを明らかにすることが出来た。更に、象牙芽細胞分化、一次繊毛、古典的WNTシグナル経路の3者の関係を明らかとする。 ② 増殖期において、Ift88をノックダウンしたKN-3細胞での、細胞接着や細胞増殖に対する影響を細胞生物学的方法により評価する。また、増殖期に機能しているIft88関連シグナル経路について探索を行う。そこで、変化の見られたシグナルに対する阻害剤を用いて抑制し、細胞接着、細胞増殖への影響を検討する。 ③ 現在までに、象牙芽細胞分化培地中に含まれるグリセロフォスフェート(β-GP)とステロイド系抗炎症薬のデキサメタゾン(DEX)を投与すると、コントロールKN-3細胞で認められる石灰化が、一次繊毛欠損KN-3細胞では認められないという結果を得ている。このため、β-GPやDEXに対する一次繊毛特異的なシグナル経路を探索する。 ④ 以上のin vitroによる解析を進めたあと、続いて動物実験を行う。象牙芽細胞上の一次繊毛は象牙質側から歯髄側へ向かって存在する。また、修復象牙質の象牙芽細管の走向は一次象牙質のそれとは異なり著しい不規則性を呈する。この特性を利用し、一次繊毛がどの様にして象牙芽細胞極性形成に与っているかを解明する。 ⑤ 様々な刺激が加わった際に、歯髄細胞により歯髄腔内に作られる修復象牙質は、象牙芽細管の走向が不規則であることに加え、石灰化も不均一である。より理想的な象牙質再生プロトコルの確立を目指すため、歯髄細胞をコラーゲンゲル3D培養することにより、一次繊毛を制御し、分化した象牙芽細胞が一方向に位置し、石灰化が正常に行われる条件を検討する。 また、現在までの達成度が、やや遅れている部分に関しては、いくつかの実験を並行して行い、研究進行速度を加速させたい。
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