4 週齢雄マウスに20週齢まで通常食(STD)もしくは高脂肪食(HFD)を与えた。12週・20週で体重・血糖値ともに、STD群に比べHFD群では、有意に増加した。20週齢のSTD群に比べHFD群にPLZ(フロリジンーSGLT阻害剤)投与した群では血糖値が投与前に比べ有意に低下した。また、STD群・HFD群共にBUN・クレアチニンに変化ないが、早期糖尿病性尿細管障害を示す尿中L-FABPがHFD群では有意に増加していた。3次元微細構造解析が可能なSBF-SEMを用いて、近位尿細管のSGLTを介した糖の再吸収の盛んなS1~S2の解析を中心に行った。STD群では尿細管細胞全体のミトコンドリア(Mit)とライソゾーム(Ly)の立体再構築を行った。基底陥入構造に沿い複雑に分枝する大きなMitと細胞頂上部に散在する小さなLyが認められたが、HFD群では、小型で円筒状のMitと巨大なオートファゴソーム(At)が認められた。HFD群にPLZを投与すると巨大AtはS1を中心に減少し、比較的大きな分枝状のMitと多数の小型~中型のLyがみられた。また、ヒト尿細管培養細胞を無血清培地(RELAR medium)にて、D-glucose濃度100mg/dlと400mg/dlで4日間培養した。Mitマーカー(Tom20・VDAC)とオートファジーマーカー(LC3)で免疫染色した。D-glucose濃度400mg/dlでMitは断片化し、Atの増加を認めた。3日目にPLZ 0.1~0.5mMを加え、培養4日目に同様に細胞を固定した。D-glucose濃度400mg/dlで分断化したMitがPLZを加える事でMitは再度伸張していた。近位尿細管上皮細胞において高血糖状態がMit動態とオートファジーの異常を惹起すること、さらにSGLT阻害剤が尿細管上皮細胞に保護的に作用する可能性が示唆された。
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