研究課題/領域番号 |
25870282
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研究機関 | 山梨大学 |
研究代表者 |
馬籠 純 山梨大学, 総合研究部, 助教 (70377597)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 水資源工学 / 再生可能エネルギー / 水工学 / 持続可能システム / 小水力発電 / 分布型水文モデル |
研究実績の概要 |
長期の気象・水文データの整備に基づく日本全域での超高解像度分布型水文モデルの構築と長期流量再現、富士川流域での詳細検証を実施した。 1. 長期の気象・水文データの整備:長期の流量再現計算に必要な降水量や気温などの気象データ、再現流量の評価に用いる河川流量データを日本全域で整備した。降水量を含む気象データは、気象庁、気象業務支援センターより収集した。また、国土交通省の水文・水質データベース、日本河川協会の雨量・流量年表データベース(DVD)を入手し、降水量と河川流量を整備した。富士川流域では、上記に加えて山梨県の県土整備部から降水量と水位データを収集した。 2.(日本全域)超高解像度分布型水文解析モデルの構築と長期流量再現:(1)高解像度の落水線網と、様々な降水量、土地利用、地質、水利用を考慮するためのサブシステムを分布型水文モデルへ統合した。(2)全国の一級河川109水系を含む日本全域での長期の流量再現計算(約35年、日単位)に着手した。さらに流況曲線に基づく発電利用可能水量の試算とその年々変動と季節変動の評価も開始した。 3.(流域スケール)富士川流域における長期流量再現の詳細精度評価:流量再現精度の不確実性について最重要入力データである降水量データに着目した。本年度は、A.アメダスのみ、B.国土交通省の雨量計分を統合、C.さらに山梨県管理の雨量計を統合の3ケースを検討した。雨量計が増えるほど(AよりもB、BよりもC)観測密度が上がり局地的な降雨量が再現可能になるため、上流域でピーク流量の再現性が上がるケースも見られた。一方で再現精度を低下させる影響も確認された。雨量計が増えるほど、データ中の異常値の混入の確率が上がることも一因ではないかと考えられる。この点の詳細な検討に加え、異常値等を除去したうえで再評価を行い、雨量計の空間分布の影響について評価することが必要である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
概要に記載したように、当該年度の計画(1. 気象・水文データ収集と整備、2. 日本域での超高解像度分布型水文解析モデルの構築と長期流量再現、3. 長期流量再現の詳細精度評価)の全てに着手できていることから、このような達成度の評価とした。なお、長期流量再現のために開発した解析システムの評価を効率的に行うために、本年度中は、約100mの解像度での流量シミュレーションに基づく各種試算を実施に留まっているが、次年度においてより高解像度化を進めることは研究環境の増強等により十分に可能であると考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
最終年度である次年度は、日本全域を対象とした(1)超高解像度小水力発電ポテンシャルの推定の実施と(2)成果公開システムの構築ならびに公開を計画している。 (1) 超高解像度小水力発電ポテンシャルの推定:これまで算定ならびに推定してきた落差および利用可能水量を入力して最終成果である発電ポテンシャルマップを作成する。これには地理情報システムGISを用いることで作図を行う。発電ポテンシャルを推定する際の小水力発電機器の設定(水車形式、効率など)や運用シナリオについては、既存の試算資料(環境省,2010)を参考にする。なお、得られた結果についても、上記の既存資料との比較により、推定結果の差異と本研究によるポテンシャルマップの特徴についてまとめる (2) 成果公開システムの構築と公開:Web-GISを利用したウェブを通じて閲覧できるシステムを試作し、最終的に公開を目指す。Web-GISとしてはオープンソースのMapServer等を導入したWebサーバの構築を検討しているが、場合によって本学で開発されたシステム(Web-Based Map-Oriented Workspace Platform(Khujanazarov T. et al., 2012) や既存のクラウドシステム等の活用についても進捗の度合いによっては検討することが課題であると考えている。
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次年度使用額が生じた理由 |
高速計算機等の導入といった予算使用を次年度に繰り越す必要性が生じたためである。本年度において、当初は、高解像度化のための日本全域のデータ処理(落水線網の高解像度化)を実施してから、分布型水文型水文モデルの高解像度化を計画していた。しかしながら、システム改良計画の詳細検討時に、分布型水文モデルの高解像度化の改良に予想よりも時間を必要とする見込みであることがわかり、H26年度の全体進捗を優先させる観点からも高速計算機器等の導入などの予算使用を次年度に繰り越すこととした。
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次年度使用額の使用計画 |
再度、高速計算機器や関連する計算機器の導入を検討している。時期としては、可能な限り速やかに計算環境の拡充のための予算使用を予定している。これにより、速やかに日本全域の落水線網の高解像度化ならびに分布型水文モデルの高解像度化の進展、さらには日本全国の高解像度発電ポテンシャルマップの作成を図っていきたい。
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