近接場光を介した励起移動を基にするナノ光電子機能デバイス実現へ向けて,構成基本要素である量子構造の作りこみと,その量子構造への情報の入口と出口の設置について研究を行ってきた.平成25・26年度に,情報の入口として機能する金ナノコロイドの散布条件を出し,また量子構造の候補である半導体量子井戸,半導体量子ドットについて,特にエネルギー輸送の有無に注目して,磁気フォトルミネッセンス測定により評価し,構造の作りこみを進めた. 平成27年度(最終年度)は,これまでの知見を組み合わせ,情報の入口と出口を有するナノ光電子構造の作製と微視的計測を目指し研究を進めた.具体的には,ガラス基板上に,2種類の半導体量子ドットを,低エネルギーの量子ドットが低密度になるように調整して積層し,さらにその上に高エネルギー量子ドットと共鳴するプラズマ周波数を持つ金コロイドを低密度(1マイクロメートルに1つ程度)で設置し,最後に白金を10 nm程度コートした.金コロイドが入口,低エネルギー量子ドットが出口となる.この試料について,走査型近接場光顕微鏡により微視的計測を行い,上記積層構造の最表面のSTMトポグラフィ像から金コロイドの位置の特定が可能であることを確認し,さらに,波長532nmのレーザー光照射下で,各量子ドットの発光エネルギーの近接場光像を取得した.この計測手法により,情報の輸送経路の可視化と,情報の輸送終端の可視化が可能となる. 経路や終端が,入口の場所や種類によりどのような多様性を持つかを調べるため,金コロイドを,偏光に敏感な金ナノロッド単体,および金ナノロッドアレイ構造に変更した試料の作製を行った.また,計測プローブに加えて,入口(励起)用プローブを用意し,入口の位置や強度を可変とするダブルプローブ計測装置の立ち上げを行った.
|