研究課題/領域番号 |
25870287
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研究種目 |
若手研究(B)
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研究機関 | 信州大学 |
研究代表者 |
野村 隆臣 信州大学, 繊維学部, 助教 (90362110)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | リボソーム / GTPaseセンター / L7/L12 / L10 |
研究概要 |
大腸菌リボソームのGTPaseセンター構成タンパク質であり、リボソーム特有の突起構造 (ストーク) を形成するL7/L12 (L7はL12のアセチル化体) に注目して解析を行った。L7/L12はリボソーム中に複数コピー (2組のダイマー) 存在し、かつRNAとではなくタンパク質 (L10) を介してリボソーム会合する唯一のタンパク質成分である。これまでのin vitro再構成実験より、L10のC末端から10アミノ酸領域を削除したL10ΔC10はL7/L12ダイマー結合数が1組となることが分かっている。そこで染色体上のL10遺伝子をL10ΔC10に組換えた大腸菌変異株 (L10ΔC10株) を作製し、L7/L12が複数コピー存在する生物学的・機能的意義の解明に取り組んだ。 L10ΔC10株の倍加時間は野生株よりも7分程度遅く、発現ベクターを用いた大腸菌内タンパク質合成量 (in vivo翻訳機能) も野生株の7~8割に低下していた。細胞内におけるL7/L12存在量はL10ΔC10株と野生株で同程度であったことから、L10ΔC10株の細胞内リボソームが1組のL7/L12ダイマーとなったことによる影響だと考えられた。一方、リボソームを抽出した後、L7/L12の存在量を電気泳動およびEF-G依存GTPase活性 (in vitro翻訳機能) より分析したところ、L10ΔC10リボソーム中のL7/L12ダイマー結合数は1組よりも減少しているという興味深い結果が得られ、さらに、L10ΔC10株ではリボソーム抽出時の高塩濃度下における超遠心操作段階においてL7/L12が過剰に遊離していることが判明した。 以上の結果より、L7/L12は複数コピー (2ダイマー) 存在する方がリボソーム機能 (特に翻訳速度) およびL10を介したリボソーム会合安定性において有利であることを明らかにすることができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
L7/L12のコピー数と翻訳速度の関連性を明らかにするため、大腸菌内リボソーム中のL7/L12ダイマー数が1組と推測されるL10ΔC10株の機能解析を行った。当初計画どおり、(1) L10ΔC10株の生育特性解析、(2) 細胞抽出液のポリソーム解析およびL7/L12抗体 (取得済) を用いたイミュノブロット解析、(3) L10ΔC10株から調製したリボソームのin vitroおよびin vivo翻訳機能解析に成功し、L7/L12が複数コピー存在することにより、翻訳速度の促進がもたらされること、さらには、L7/L12のリボソームへの会合安定性が向上することを明らかにすることができた。
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今後の研究の推進方策 |
交付申請書に記載した研究実施計画に従って、平成26年度はGTPaseセンター構成タンパク質の一つであるL11に注目して解析を進める。リボソームとGTPase翻訳因子の相互作用には厳格な生物界特異性が見られ、ストークタンパク質とともにL11の関与が示唆されている。そこで、まず染色体上のL11遺伝子を破壊した大腸菌変異株 (ΔL11株:取得済み) に対して、各生物界 (真正細菌、古細菌、真核生物) のL11相同体をプラスミドにて細胞内補填する系を構築し、生育特性への影響や各L11相同体の大腸菌リボソームへの細胞内会合性を比較・解析する。さらに、各L11相同体補填株から抽出したリボソームのin vitro翻訳機能を解析することで、翻訳機能の生物界特異性におけるL11の機能的分子機構を解明する。
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次年度の研究費の使用計画 |
購入予定であった消耗品試薬に不具合 (メーカーも確認済み) が生じ、購入を次年度に見送ったため。 各生物界 (真正細菌、古細菌、真核生物) のL11相同体を大腸菌内で補填することができるプラスミドの調製、およびそれらを用いたΔL11形質転換体の機能解析を実施するため、必要研究経費として以下のように計画している。 試薬等の物品費として90万円、学会発表や研究打ち合わせの国内旅費として10万円、論文校正および投稿費として10万円。 なお、繰り越し金を用いて、購入を見送った消耗品試薬の別ロット (現ロットは不具合がでたものと異なることは確認済み) を購入する。
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