研究課題
リボソームとGTPase翻訳因子の相互作用は、両者が同一生物界のときに限られる。この特異的識別に対して中心的な役割を担うのがストークタンパク質であり、特にそのC末端ドメインが寄与することを昨年度明らかにした。リボソームタンパク質L11はストークタンパク質と共にGTPase翻訳伸長因子と相互作用することが共構造解析より明らかにされており、このことは、L11もGTPase翻訳因子に対する生物界特異的な相互作用に関連することを示唆している。この仮説を実証するため、L11を欠損した大腸菌変異株 (ΔL11株) の細胞内において、真正細菌の大腸菌L11 (Ec_L11)、古細菌のP. horikoshii aL11 (Ph_aL11)、真核生物のカイコeL12 (Bm_eL12) をプラスミドにて補填する実験系を構築し、各補填株の生育解析、および単離したリボソームの機能解析を行った (便宜上L11-likeと総称する)。ΔL11株の生育速度は野生株の1/5程度であるが、同一生物界のEc_L11補填では野生株と同程度まで生育が回復した。一方、異種生物界由来のPh_aL11とBm_eL12 補填では僅かに生育の回復は認められるものの、その程度はかなり低いものであった。各補填株から調製したリボソームに対してタンパク質成分の解析を行なったところ、いずれのL11-likeタンパク質も大腸菌リボソームに取り込まれていることが示された。つまり、L11-likeは生物界に依存せずにリボソーム会合することができるが、生育に対する互換性は低いことが判明した。この要因を探るため、リボソームのin vitro翻訳伸長機能解析を行なった。結果、L11-likeの補填が同一生物界のときと比較して、異種生物界の場合では、GTPase翻訳伸長因子との受容性が著しく低下しており、この影響が生育挙動に反映されたものと考えられた。
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