研究課題/領域番号 |
25870288
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研究種目 |
若手研究(B)
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研究機関 | 信州大学 |
研究代表者 |
伊藤 吹夕 信州大学, サテライト・ベンチャー・ビジネス・ラボラトリー, 研究員 (20415079)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | Fusarium / シリカ / ナノ粒子 |
研究概要 |
物質のナノスケール化は、新しい機能性や特性向上をもたらす事が期待できる。さらに21世紀を持続的社会とするために“環境にやさしいもの作り”が重要になってくる。そこで本研究は、微生物(細菌,酵母,放線菌,糸状菌)を利用した“物質のナノスケール化”を目的としている。これまでに、糸状菌Fusarium oxysporum AJ6716がアモルファスシリカ板・水晶板上でナノ粒子を合成する現象を見出した。この現象の解明と応用利用を狙い、今年度は、Fusarium属8種類、それ以外の微生物 12種類の計20種類で同様の現象が起こるかの検討をまずシリカ板をもちいておこなった。培養後、FE-SEMで観察をおこなったところ基本的には、ほぼ全ての17菌種で石英基板上にナノ物質を生成させることができた。しかし、その形状はさまざまであった。菌糸の周囲に直径約20nmのナノ粒子を生成するものや、粒子状ではないが、菌糸の周囲に基板以外の構造体を形成するものが確認できた。今回形成されなかった3菌種についても、過去に形成されていたことがあるので、おそらくすべて条件さえ整えれば、なにかしらの構造体を生成できるのではないかと考える。EDXで簡易分析をおこなったところ、胞子にもケイ素が蓄積している可能性が示唆された。培養基材としては、スライドガラスなどでも試したが、ナノスケール化を観察するには、純粋な石英基板を使用した方が均一に生えて観察し易かった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
今年度は、(1) ナノ構造体の成分分析と構造解析(2) 培養後の基材の構造解析(3) 微生物菌種間・菌属間の比較を研究計画にあげた。いずれも計画通りに実験を行い、それぞれに関して結果を得ることができた。この点から、おおむね順調に進展していると言える。 ただし、(2)の培養後の基材についての詳細な構造解析については、十分な結果を得ることができなかった。外部委託することを前提に、解析依頼の為の条件検討をおこなっており、今年度ある程度の見通しを立てるところまで出来た。今後、さらに詳細な条件決定を行い、詳細な解析を進めていきたいと思う。
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今後の研究の推進方策 |
1)シリカのナノ粒子を生成する微生物の生成機構の解析 2) 微生物由来ナノ構造体の大量調整方法の検討を含むアプリケーションの開発 の以上2課題を中心に研究を進める予定である。なぜ、ある種の微生物がシリカ基板上で生育し、構造体を生成するのか。おそらく代謝産物、酵素類がターゲットになると思うので、その辺りを中心に解析を進める。また、構造体を形成した基板そのもののアプリケーションを視野に入れて、培養方法の検討を行っていきたい。
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次年度の研究費の使用計画 |
今年度、培養基材の分析を外部委託すること、および論文発表の為の校正費用、投稿費を計上していたが、行う事ができなかった為、次年度に持ち越すことになった。また、酵素精製の為の新規カラムを購入する予定であったが、これも次年度に持ち越す事にした。 今年度実施できなかった外部委託による生産物および培養基材観察のための試料加工および分析委託料について次年度に繰り越し実施する為、その他として計上する。また消耗品費として今年度購入を見送ったタンパク質精製カラム代を計上する。また、研究補助者を雇用する費用や資料閲覧代、英語論文の校閲費として謝金を計上する。
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