研究課題/領域番号 |
25870290
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研究機関 | 信州大学 |
研究代表者 |
齋藤 武士 信州大学, 学術研究院理学系, 准教授 (80402767)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 岩石磁気学 / 磁性鉱物 / 火山砕屑性堆積物 / 御嶽山 / 水蒸気噴火 |
研究実績の概要 |
本研究は磁気岩石学的手法を用いて,火山噴出物に含まれる磁性鉱物の結晶化条件を決定し,条件の変遷に伴う鉱物の産状の変化を詳細に明らかにすることによって,マグマの誕生から噴火の発生,噴出物の堆積までのプロセスを連続的に,かつ高精度に解き明かし,今後の火山活動予測へと展開するための基礎的な研究を行うことを目的としている。本年度はいくつかの火山で採取された天然試料の解析を行い,その研究成果を学会で発表した。前年度に引き続き神津島砂糠溶岩に含まれる磁性鉱物の解析を行ったところ,チタノマグネタイトの結晶中にガラスのナノライトが含まれることが明らかとなった。結晶成長の初期段階のマグマが高粘性のため,結晶中に取り込まれたと考えられる。この研究成果はAOGS2014年大会で発表した。カリブ海小アンチル諸島沖で掘削された火山砕屑性堆積物の岩石磁気学的研究では,タービダイト起源の堆積物と降下物起源の堆積物とで異なる岩石磁気学的特徴を示すことが明らかとなった。海中での火砕物の運搬作用の違いを反映して,粒子の選別作用が働いたと考えている。この研究成果は日本地球惑星科学連合2014年大会,地球電磁気・地球惑星圏学会2014年秋季大会等で発表済みであり,現在成果をまとめている。また2014年9月に水蒸気噴火を行い,大きな被害をもたらした御嶽山2014年噴火についても,現地調査と試料採取を緊急に行い,磁気岩石学的解析を進めた。噴出物中のFeTi酸化物はほとんどが硫化物に置き換わっており,山体内部の熱水との反応が示唆される。熱磁気分析から,硫化物は400度以下の温度条件下であったことがわかった。この研究成果については日本地球惑星科学連合2015年大会で発表する予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
日本だけでなく海外の試料も含めた多様な火山噴出物を対象に着実に研究を進め,磁気岩石学的手法を適用することで,磁性鉱物の形成から堆積までの様々な段階の情報を抽出できることを明らかにした。それぞれの情報からマグマの状態,噴火プロセスの違いなどを明らかにした。
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今後の研究の推進方策 |
平成27年度は最終年度でもあり,研究成果をまとめることにまず注力する。すでにカリブ海小アンチル諸島沖で掘削された火山砕屑性堆積物の解析からは,海中での運搬・堆積プロセスに起因する磁気岩石学的特徴を捉えている。学会発表も重ね,内外の研究者と議論することで,研究結果の問題点の洗い出しや,議論の補強を行っている。平成27年度中に論文化につなげたい。また御嶽山2014年噴出物についても,さらに解析を加える予定である。特に南麓の河川沿いに運搬されている噴出物は,カリブ海の研究成果と比較することが可能であり,モデルの普遍性を確認する絶好の研究対象である。神津島砂糠溶岩についてはナノライトの結晶化条件についてさらに制約を加え,成果をまとめたい。
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次年度使用額が生じた理由 |
当初導入を計画していた結晶化実験用電気炉の導入を中止したため。
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次年度使用額の使用計画 |
磁性鉱物の化学組成分析を高知大学海洋コア総合研究センターで行う予定であり,次年度使用額は平成27年度請求額と合わせて,その旅費として使用する。またAGUでの研究発表を予定しており,その旅費としても使用する予定である。
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