研究実績の概要 |
1.研究対象 昨年度から継続して,終末期医療における法的・倫理的・社会的問題を中心に,国内外の研究者との情報交換を実施した。また,海外における議論も含めて,特にドイツ語圏を中心に,基礎的資料の収集及び整理を行った。
2.実施内容 我が国における終末期医療の刑事法的問題を巡る議論の概論的な整理を行った。その成果に関しては,法学系雑誌(神馬幸一「安楽死・尊厳死」法学教室418号〔2015年7月〕9-15頁)に掲載した。そこにおいて最終的に示したように,当該関連場面における実体法的な調整のみならず,適正な手続保障を目指す方向性を見定めたく構想中である。そのための比較法的な情報を改めて分析し直している段階である。また,認知症高齢者に関する法的・倫理的・社会的問題を検討する研究会に所属して,実務的な観点からの問題状況に関する情報収集を行った。そのことに関連して,ドイツ語圏における高齢者虐待に関する論文が翻訳中の段階にある。この翻訳から,介護の現場における高齢者が置かれた状況を把握することが可能になるものと思われる。更に,我が国では未だ検討が詳しくされていない「矯正医療における終末期ケア」の問題に関する比較法的な論考を発表する機会を得た(神馬幸一「刑務所という文化における終末期ケア」罪と罰53巻2号〔2016年3月〕41-43頁)。ここでは,主にスイスで実施されている刑務所医療の研究プロジェクトを紹介した。
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