研究課題/領域番号 |
25870296
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研究種目 |
若手研究(B)
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研究機関 | 静岡大学 |
研究代表者 |
石原 顕紀 静岡大学, 理学(系)研究科(研究院), 講師 (70432193)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 内分泌撹乱 / エピジェネティクス |
研究概要 |
甲状腺ホルモンは、核内に受容体が存在している。この核内受容体はリガンド依存型転写因子として機能し、標的遺伝子の転写を調節していると考えられている。現在提唱されている制御モデルは、受容体にホルモンが結合することによって受容体の立体構造が変化し、転写制御複合体を再構成することによってヒストンが修飾され、クロマチン構造が変化する、というものである。 一方で、内分泌を撹乱する化学物質の中には世代を超えて影響を及ぼすものが存在すると考えられ、このような作用は、エピジェネティックな影響によるものであることが想定されている。しかしながら、甲状腺ホルモンによるエピジェネティックな作用に及ぼす化学物質の影響について、詳細な検討はされておらず、科学的根拠に乏しい。そこで本研究では化学物質がヒストン修飾、DNAメチル化などのエピジェネティック作用に及ぼす影響についてゲノムワイドな解析を行うことを目的としている。 実験の第一段階として、ある特定の遺伝子制御機構における化学物質のエピジェネティクな撹乱作用について検討した。甲状腺ホルモンが制御しているヒストン修飾、RNAポリメラーゼ修飾などに及ぼす複数の化学物質の影響を検証したところ、化学物質によって異なる作用を示した。少なくともある化学物質は転写伸長反応を阻害している傾向が見られた。この研究結果は既に国際的な学術論文に受理されている(2014年)。今後はこのような化学物質によるエピジェネティックな撹乱作用をゲノムワイドに解析して行く予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究の最終目標は化学物質によるエピジェネティックな撹乱作用をゲノムワイドに解析することにある。そのため、実験の前段階としてゲノムワイドな解析を行う以前に、特定のホルモン応答遺伝子においてこのような作用の検証を行う必要があり、初年度はこの検証に時間を費やした。 今後は最終目標であるゲノムワイドな解析を行うべく、適切な実験系の設定、実際の実験を推進して行く予定である。
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今後の研究の推進方策 |
初年度の研究において、前述の通り特定のホルモン応答遺伝子の発現制御における化学物質のエピジェネティックな撹乱作用を検証した。今後は、最終目標であるゲノムワイドな解析を行うべく、適切な実験系の設定を検討して行く。ゲノムワイドにヒストン修飾を検討する上ではChIP on Chip解析、もしくはChIP-seq解析いずれかを行い、アフリカツメガエルで近年公開されたドラフトゲノム配列にヒストン修飾状態をマッピングして行くことになるだろう。またDNAのメチル化を検討する上で、メチル化結合タンパク質抗体によって分画されたDNAをゲノムワイドに解析し、全ゲノム中でのメチル化状態を大まかにつかむことを検討している。また、実験が順調に進むようであれば、bisulfiteゲノムシーケンスを行い、より詳細にDNAメチル化に及ぼす化学物質の影響を検討を行う予定である。
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次年度の研究費の使用計画 |
本研究の最終目標は、化学物質によるエピジェネティックな攪乱作用のゲノムワイドな解析を行うことにある。初年度はその準備段階として特定の遺伝子発現制御における同撹乱作用の検証を行い、ゲノムワイドな解析を行っていない。ゲノムワイドな解析を行うためにまとまった研究費が必要となるため、初年度分を次年度以降に使用することとした。 初年度繰越額と合わせて、ゲノムワイドな解析を行うための研究費とする。実際には次世代シーケンサ解析に用いるライブラリ調製費用、シーケンス解析費用として用いる予定である。また、データ解析用のコンピュータは初年度に購入済みである。
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