研究課題
若手研究(B)
肝細胞癌手術検体に含まれる癌組織の一部を採取し、細切やリベラーゼ処理を行った後に培養することで、100個程度の癌細胞集団からなるCancer Tissue-Originated Spheroids (CTOS)を作成することに成功した。現在はCTOSを作成するまでの酵素処理や培養条件を検討中である。肝細胞癌手術検体から作成したCTOSは、文献で報告されている大腸癌由来のCTOSよりも維持や継代にやや困難である印象を受けたため、大腸癌由来のCTOSでの実験も並行して行った。文献(Kondo J, et al: PNAS. 2011)でこれまでに報告されている手法を踏襲し、大腸癌由来のCTOSを作成した。大腸癌由来のCTOSを質量顕微鏡で解析したところ、m/z 885.5の物質が興味ある局在を示した。m/z 885.5はその後の解析によりホスファチジルイノシトール(PI(18:0/20:4))であることが判明し、現在はCTOSの生体環境維持機構に対するPI(18:0/20:4)の影響ついて検討している。
2: おおむね順調に進展している
平成25年度の研究計画として、質量顕微鏡法を用いて手術摘出標本由来CTOSの脂質・代謝物分布を解析すること、を挙げていた。肝癌手術検体からのCTOS作成には成功し、現在は最適な酵素処理や培養条件を検討している。技術的に確立されている大腸癌手術検体から作成したCTOSに関しては、質量顕微鏡で解析を行い、CTOSの生体環境維持機構に関与していると思われる生体分子を見出すことに成功した。
CTOS内部において、特徴的な分布を示したリン脂質の局在に影響を与えると思われる、脂質合成・代謝関連の酵素発現をCTOSの免疫組織染色で確認する。CTOSに対して低酸素や抗癌剤の投与などの外的ストレスを加えた状況において、リン脂質の分布がどのように変化するのか、検討してみる。
すべて 2013
すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件) 学会発表 (2件)
Journal of Hepatology
巻: 59 ページ: 292-299
10.1016/j.jhep.2013.02.030.