肝細胞癌手術検体からCancer tissue originated Spheroids(CTOS)を作成したところ、文献で報告されている大腸癌由来のCTOSよりも培養や継代が困難だった。そのため、文献(Kondo J. et al:PNAS. 2011)でこれまでに報告されている手法を踏襲し、大腸癌手術摘出標本からCTOSを作成した。大腸癌由来のCTOSは培養中に一定の大きさまで増大することが確認され、癌組織に見られるようなHeterogeneityも認めた。安定的に培養されたCTOSを質量顕微鏡法で解析したところ、m/z 888.5 の物質がCTOSの辺縁部に豊富に存在することが判明した。また、比較対象として用いた大腸癌細胞株由来のspheroidでは、そのような局在の変化は認めなかった。m/z 888.5の物質は、タンデム質量分析の結果からホスファチジルイノシトール(PI(18:0/20:4))であることが明らかとなった。更に、ヒトの大腸癌組織切片を質量顕微鏡で解析したところ、やはり腫瘍の辺縁部にはホスファチジルイノシトール(PI(18:0/20:4))が豊富に存在していることが証明された。腫瘍辺縁部に特定のリン脂質が存在することにより、癌と周囲組織の微小環境に何らかの影響を与えている可能性が示唆された。 以上の内容をまとめ、論文報告した(Sci Rep. 2016 Jul 20;6:29935.)
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