研究課題/領域番号 |
25870304
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研究種目 |
若手研究(B)
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
望月 直人 大阪大学, キャンパスライフ支援センター, 准教授 (20572283)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 非行 / 発達障害 / 虐待 / トラウマ / 解離 / 逆境的体験 |
研究概要 |
研究Iに関して、児童自立支援施設の入所児童合計47名を対象に精神的健康や不適応問題について調査を行い、一般児童・生徒と発達障害児(非行行動のない)との比較を行った。使用した尺度は抑うつ、攻撃性(攻撃性)、SDQ日本語版(他者評定)であった。また、研究IIに関しては、本研究前から収集データを合わせて102名を対象に、PARS(広汎性発達障害日本自閉症評定尺度)、ADHD-RS、Vineland-II(それぞれ他者評定)について分析した。なお本報告は、平成25年度3月時点に収集したデータを分析したものである。 児童自立支援施設入所児と一般児童、ASD児との精神的健康と不適応問題について比較を行った。結果より、抑うつに関して入所児とASD児とは有意差は示されず、一般児童に比して有意に低かった。攻撃性に関して、入所児は一般児童よりも有意に高いが、ASD児よりは有意に低い結果となった。SDQに関して、入所児は一般児童に比して、向社会性因子を除くすべての不適応問題を示す下位尺度で有意に高かった。 PARS,ADHD-RSの結果より、施設入所児の75%が自閉症傾向,47%がADHD傾向,41%が両者の傾向を有することが示された。また生活適応について,施設群は一般群やASD群(非行行動のない)、ADHD群(非行行動のない)との比較では,コミュニケーション、社会性の適応が低い結果となった。日常生活スキルについては差が見られなかった。これらの結果から,児童自立支援施設入所児は、一般有病率から比してASD傾向やADHD傾向を有する割合が非常に高いことや、生活適応についても非行行動のない発達障害児よりも低いことが明らかとなった。 これらの結果をもとにして、現在、原著論文を学会誌に投稿準備中である。また平成26年度は施設の入園時点と退園時点を縦断的に追跡したデータを解析する予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究開始前より、研究協力施設とは研究協力体制にあり、データ収集を行っていたこともあり、H25年度に予定していたデータ収集および分析については、おおむね達成した。平成26年度に学会発表,学術誌への投稿を予定している。なお、診断名や個人属性、逆境的体験の児童記録と生活適応との関連については、分析方針について検討中であり、分析結果をまとめた時点で学会で発表する予定である。 他の児童自立支援施設との研究協力について、交渉は難航した。ただ、いくつかの施設からは関心を得られ,前向きな交渉となっている。他施設のデータ収集が可能となった場合、H26年度にそれらのデータも併せて解析し、施設入所児の実態について結果の妥当性を高めることを検討している。児童自立支援施設における心理教育プログラム支援についても研究計画通り、2グループを実施し、介入群としてプログラムの事前事後にデータも収集した。プログラム参加者は上半期5名、下半期4名の計9名であった。介入群と統制群との施設における支援効果の比較については、被験者が9名ということもあり、統計的検討はH26年度に行うこととした。
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今後の研究の推進方策 |
本研究計画に沿って、入所時と退園時での生活適応とトラウマ症状の変化について,縦断データを検討し,児童自立支援施設の支援効果の検討を行うことが,H26年度における主要な目的である。また心理教育プログラム実施群と非実施群との退園児での比較も行うことで,心理教育プログラムの効果を検討することも予定している。 縦断データの収拾について,初年度の研究計画から以下の2点で変更となった。①退園児データ収集について、H26年度からのデータ収集・分析となったこと、②抑うつ・攻撃性についての入所期データについては、個別での抑うつ,攻撃性の評定ではなく、トラウマ尺度(TSCC)の下位因子の抑うつ因子、攻撃性因子を使用することになった。①については、当初の計画よりも収集できるデータの減少が予想されるため,統計分析可能なデータ数に至らない場合は、本研究期間後もデータを収集することでデータ数を補完予定である。②については、下位因子として認められている抑うつと攻撃性の変化を検討することで、十分に支援効果が検討できると考えられるため、問題はないと考えられる。すでに収集・整理されているデータについては、分析結果をまとめ、随時、学会や学会誌に発表する予定である。
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次年度の研究費の使用計画 |
当該年度の未使用額がやや生じた主な理由は、人件費が想定していたよりも少ない費用で、研究が遂行可能となったものの、研究遂行に必要な物品が想定よりも多くなったことによると考えられる。 本研究を遂行していく上で必要に応じて研究費を執行したため、各費目別ごとに当初の見込額と執行額は異なったが、研究計画に変更はなく、前年度の研究費も含め、当初予定通りの計画を進めていく。
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