前年度までの研究結果により、児童自立支援施設入所児は、発達障害傾向が有意に高いことが明らかとなった。最終年度は、入所児の支援困難度をさらに高める被虐待の影響に着目した。A-DES(解離体験尺度:自己評価)の結果から、解離性障害が疑われる臨床域は約15%だが、日常生活で解離症状を体験するレベルは約40%に上ると考えられた。また、CDC(解離評価表:他者評価)の結果からは、それぞれ約9%、約23%であった。CDCでは、A-DESに比して、臨床域の割合は少ない結果となったが、これはCDCが他者評価のため、ある程度顕在的な解離症状がカウントされること等と関連していると思われた。 TSCC(トラウマ症状チェックリスト)の結果から、トラウマ症状として不安、抑うつ、外傷後ストレスの3因子で何らかの支援や要配慮の子どもたちが、20%を超えていることが明らかとなった。多くの入所児において、下位尺度で回顧評定に比して、現在評定の得点が下がっており、施設入所後の安定した生活によってトラウマ症状が軽減していることを示唆された。他方、外傷後ストレス、解離、明らかな解離の3因子では変化が見られなかった。安全な生活の確保によって、外傷後ストレス症状が表出されたと捉える一方で、施設への入所トラウマの影響もあると推察された。 3年間の研究機関を通じて、児童自立支援施設入所児の発達的特徴と被虐待の影響について明らかにすることができた。発達障害と被虐待という掛け算の影響によって、支援の困難な状態像につながっていることがデータからも示唆された。また、施設の日常生活支援によってトラウマ症状の改善が見られることも明らかとなったが、一部のトラウマ症状では変化が見られなかった。施設において、発達障害特徴に合わせた支援のさらなる充実、トラウマに焦点を当てた支援の導入、退所後のフォローアップが今後の課題となるだろう。
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