研究課題/領域番号 |
25870305
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研究種目 |
若手研究(B)
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
藤原 慎一 名古屋大学, 博物館, 助教 (30571236)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | モグラ / 掘削適応 / 肩帯 / 復元 / 四肢動物 |
研究概要 |
脊椎動物の骨格では、前肢骨格と胴体骨格(脊柱や肋骨)が互いに関節しないため、絶滅動物において前肢の位置を確からしく復元することが困難であった。本研究では、哺乳類のような下方型姿勢の四足歩行性動物の胴体が前肢骨格から筋肉によって吊り下げられていることに注目し、バランスをとりながら胴体を吊り下げることができる前肢の最適位置を計算によって見積もった。この前肢の最適位置は、胸郭の三次元形状とそれを取り巻く筋肉の走行方向の影響を受ける。複数の動物の遺体標本をCT撮像し、三次元筋骨格系モデルを作成した結果、前肢の最適位置はごく限られた領域にしかないことが分かり、さらに、前肢骨格と胴体骨格の理論上の最適な位置関係が、実際の肩帯位置と対応することが分かった。このことから、四足歩行性の脊椎動物の胴体骨格の形状が、前肢による姿勢維持にとって重要であることが示された。本成果は、国際古脊椎動物学会で発表し、現在、投稿準備中である。 次に、モグラのように前肢で掘削を行う動物の胸郭形態が、特異的な運動機能に対してどのように応答しているかを調べるため、前肢による掘削適応の程度に多様性が見られるトガリネズミの仲間の遺体標本を収集し、その胸郭の三次元形状をCT撮像によって収集した。今後、応力解析によって、強力な掘削運動に対する適応が見られるかどうかを検証していく。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
予算の配分額に伴い、当初購入を予定していた、フレーム撮影が可能なレーザースキャナの購入を断念し、純粋に形状を取得することのみを目的としたより安価なレーザースキャナを購入することにした。ただし、26年度からの増税の影響を考慮し、26年度に購入を予定していたモーメント解析用ソフトウェアを25年度に購入し、レーザースキャナの購入を26年度に回すことにした。そのため、当初の研究目的とは順番が前後することになったが、25年度はモーメント解析を中心に研究を進めた。
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今後の研究の推進方策 |
予算の都合により、当初購入を予定していた動作解析用の三次元レーザースキャナの代わりに、より低精度の形状取得のみを目的とした三次元レーザースキャナを26年度に購入する。これに伴い、動物の動作解析を行うことを断念し、胸郭骨格の強度解析を主に進めていくこととする。また、より低精度のレーザースキャナでも十分な解析ができるよう、より大型の動物を選択してデータ収集を行うこととする。
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次年度の研究費の使用計画 |
本研究では、レーザースキャナやCT撮像によって三次元立体形状を取得する必要がある。しかし、レーザースキャナや立体構築用のソフトウェアは高額であり、単年度の予算では届かず、次年度の調査旅費も捻出できなくなると判断した。次年度使用額と翌年度請求額を合わせることで、左記の高額物品を購入し、さらに調査研究を円滑に進めることができると考える。 年度初めにレーザースキャナ及び三次元立体構築ソフトウェアを購入し、残りの請求額で各地の博物館への調査旅費とする。
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