本研究課題は、プロトン導電体や水酸化物イオン導電体を電解質に用い、白金やロジウムなどの適当な電極で水蒸気を電気分解する際に電極上で発生する活性種が様々なガスや物質を酸化もしくは還元する現象に着目するものである。発生する活性種は外部からの電源により、反応場で起こる化学反応の程度とタイミングをコントロールできる。このコントロールを通して、例えばエンジン排ガスに含まれる有害成分である窒素酸化物を無害化したり、濃度センシングに用いることも可能である。最終年度である本年は、これまでに明らかにしてきた窒素酸化物の無害化反応だけでなく、微粒子物質(PM)センサへの応用へ展開した。また、プロトン導電体におけるPMセンシング反応機構を明らかにすることで、活性酸素の特異性を明らかにした。具体的には、電気化学的に活性化された活性酸素は、電極近傍で燃焼性物質300℃以下の低温領域でも微粒子炭素であるPMの燃焼反応を引き起こす。その結果、電極における分極が変化するため、この変化をPMシグナルとして活用できることを見出した。また、本反応はセンシングする物質を燃焼、つまり反応場から除去する反応を伴うため、常に電極表面をクリーンな状況に保つことができるため、センシング部分の再生のための加熱や除去作業を行う必要がなく、簡素で信頼性のあるセンシング素子の設計につながると期待できる。本反応機構は電極触媒の改良によりさらなる選択性の獲得が期待できるが、一般的な白金電極を用いても本研究成果が得られたことは、応用展開のしやすさも示していると考えられる。
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