研究課題
若手研究(B)
モンゴル南東部のシネフダグ地域に露出する中部白亜系の湖成堆積物(シネフダグ層)は,地球軌道要素変動(数万~数十万年周期)に起因した降水量変動を記録する.また同層には年縞が保存されており,白亜紀中期における数年~数十年スケールの気候システム変動を解読できる可能性がある.そこで本研究では,シネフダグ湖成層を対象に,岩相変化に伴う地球軌道要素変動の解析(mスケール)と,各岩相の年縞層厚や元素組成変動の解析(μmスケール)を併せて行うことにより,白亜紀中期“超温室期”の日射量極大期・極小期において,アジア内陸中緯度域の気候システム変動が,数年~数十年スケールでどのように変動していたのかを詳細に解明することを目的とする.本年度は特にシネフダグ層に記録されると期待される数年~数十年スケールの気候変動を復元する為,シネフダグ層の掘削コア試料を対象に,X線分析顕微鏡(XGT-5000)を用い,μmスケールで元素組成変動を測定し,ラミナ層厚の時系列変化と卓越周期の解析を行った.その結果,約11年,約88年,約400年の卓越周期が検出され,現代の太陽活動周期に類似した周期の気候変動(降水量変動)が記録されていることが示唆された(長谷川ほか,日本堆積学会2014年山口大会,口頭発表).本研究成果は現在3編の筆頭著者論文として国際誌に投稿準備中であるほか、1編の共著者論文として国際誌(Alcheringa)に公表した.また研究代表者自身の提唱した仮説であり,本研究課題でその発生メカニズムの解明を試みている,白亜紀中期“超温室期”におけるハドレー循環の縮小に関する論文(Hasegawa et al., 2012)が,日本堆積学会2014年論文賞を受賞した.
2: おおむね順調に進展している
本研究では,シネフダグ湖成層を対象に,岩相変化に伴う地球軌道要素変動の解析(mスケール)と,各岩相の年縞層厚や元素組成変動の解析(μmスケール)を併せて行うことにより,白亜紀中期の日射量極大期・極小期において,アジア内陸中緯度域の気候システム変動が,数年~数十年スケールでどのように変動していたのかを詳細に解明することを目的としている.本年度は後者の,μmスケールでの元素組成変動の解析を主に進め,白亜紀中期における太陽活動周期の気候変動が記録されていることが示唆された.この結果は期待以上の成果と言え,今後も更に解析を続ける予定である.一方,前者のmスケールでの地球軌道要素変動の解析は未だあまり進めていない為,今後はmスケールの解析も併せて進めて行く予定である.
「11.現在までの達成度」にも記述したように,本研究課題の当初の計画の内,mスケールでの地球軌道要素変動の解析は未だあまり進んでいないため,今後はシネフダグ層の長尺掘削コア試料とその物理探査データを活用し,地球軌道要素変動(数万~数十万年スケール変動)を詳細に解明していく.そして,岩相変化に伴う地球軌道要素変動の解析(mスケール)と,各岩相の年縞層厚や元素組成変動の解析(μmスケール)を併せて行うことにより,白亜紀中期“超温室期”の日射量極大期・極小期において,アジア内陸中緯度域の気候システム変動が,数年~数十年スケールでどのように変動していたのかを詳細に解明していく.
すべて 2014 2013 その他
すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 1件) 学会発表 (1件) 図書 (3件) 備考 (1件)
Alcheringa: An Australasian Journal of Palaeontology
巻: 38 ページ: 12p.
10.1080/03115518.2014.870834
Haiguulchin
巻: v.48 ページ: p.226-231
http://www.num.nagoya-u.ac.jp/outline/staff/hasegawa/index.html