研究課題
ミトコンドリア膜間部に局在するUps1-Mdm35複合体は,ミトコンドリア特異的リン脂質カルジオリピン(CL)の前駆体リン脂質,ホスファチジン酸(PA)のミトコンドリア外膜から内膜への輸送を仲介する。本研究ではUps1-Mdm35の外膜上のレセプター因子の検索を,光架橋性非天然アミノ酸を用いた部位特異的架橋反応を駆使して行ったが,レセプター因子の発見に至らなかった。しかしその一方で,Ups1と遺伝学的に相互作用するミトコンドリア内膜タンパク質Xを同定した。Xの機能解析を行った結果, Xを欠損した酵母株では,野生型に比べCLの量が減少することがわかった。さらに14C-セリンを用いたパルスチェイス実験により,小胞体からミトコンドリアへのリン脂質輸送速度が,タンパク質Xの欠損により著しく遅くなることがわかった。これらの結果は,タンパク質Xが新規リン脂質輸送因子であることを示唆している。本研究ではさらに,Ups1-Mdm35複合体の機能解析として,大腸菌から生成したUps1-Mdm35複合体とリポソームとの結合能,基質であるPAの輸送能を調べた。Ups1は酸性条件下で負に帯電したリン脂質に結合することが明らかとなっていたが,中性条件では酸性リン脂質にほとんど結合しないことがわかった。その一方で,中性条件でUps1がCLとは結合することを明らかにした。さらにUps1変異体を複数作製し,in vitroにおいてPAのリン脂質輸送能を解析したところ,CLへの結合がリン脂質輸送能に重要であることが示唆された。Ups1がCLに結合する際に,Ups1はMdm35から解離する。Ups1・Mdm35間をジスルフィド結合により解離できなくした変異体ではリン脂質輸送能が低下することから,Ups1とMdm35のダイナミックな相互作用がリン脂質輸送に重要であることが示唆された。
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