研究課題/領域番号 |
25870312
|
研究種目 |
若手研究(B)
|
研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
中務 邦雄 名古屋大学, 理学(系)研究科(研究院), 助教 (90547522)
|
研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2015-03-31
|
キーワード | 小胞体 / 品質管理 / ユビキチンリガーゼ / タンパク質複合体 / 生体膜 |
研究概要 |
小胞体内腔の構造異常タンパク質はサイトゾルへ逆行輸送(レトロトランスロケーション)され、ユビキチン・プロテアソーム系によって分解される。この分解系はER-associated degradation(ERAD)と呼ばれており、小胞体タンパク質の品質管理機構で必須の役割を担っている。本研究では、ERADの中心的複合体である膜貫通 E3リガーゼHrd1と、基質認識サブユニットHrd3に着目して、両者の「直接的な相互作用」に必要なアミノ酸をin vivo部位特異的光架橋反応法によって同定することを目指している。さらに基質のフラックスを変化させて、Hrd1-Hrd3の相互作用の変化を追跡することも目標としている。Hrd1は基質をサイトゾルへ送る“孔”の最も有力な候補である。Hrd1-Hrd3相互作用の動態を解析すれば、レトロトランスロケーションのメカニズムの解明につながると期待される。 本研究の予備実験で、レトロトランスロケーションを駆動する因子の一つと考えられているCdc48/p97の機能を低減させると、ユビキチン化基質がHrd1複合体上に蓄積すること、その結果Hrd1とHrd3の結合が強くなることを見出していた。平成25年の前半はこの結果を最終的に整理して論文として報告した(Nakatsukasa et al., Mol. Biol. Cell, 2013)。そこで本研究では、Hrd3に光架橋性アミノ酸を導入して、Hrd1との直接的な相互作用の検出を試みた。Hrd3の変異体の解析から、690番目付近のアミノ酸がHrd1との相互作用に必要であることが予想されたため、その近傍に集中的に導入した。現在までにHrd3と光架橋特異的に結合するタンパク質を検出しており、Hrd1あるいは他のタンパク質であるか確認中である。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成25年度の目標は、小胞体膜タンパク質複合体をin vivo部位特異的光架橋反応法によって解析する系を導入すること、そしてHrd1とHrd3の直接的な結合の検出であった。現在までにHrd3を酵母で発現させるプラスミドを構築して目的の位置にアンバーコドンを導入し、光架橋性アミノ酸の導入を行った。光架橋性アミノ酸の導入効率は凡そ10%前後と低いことが予想されたため、Hrd3を過剰発現させることによってHrd3の発現量を確保した。紫外線の照射条件の検討も行った。細胞に直接紫外線を照射した場合と、あらかじめ回収した膜画分(小胞体を含む)に照射した場合で、Hrd3と架橋されるタンパク質のバンドパターンに若干の差異が見られた。細胞に紫外線を直接照射した場合はより生理状態に近い条件での相互作用を検出していると考えられる。一方、粗精製した膜画分、あるいは精製した小胞体画分に照射した場合は、架橋効率が上昇した可能性も考えられた。現在までに少なくとも光架橋産物の同定に成功しており、実験系として動作しつつあるものと考えられる。
|
今後の研究の推進方策 |
本年度は当初の計画通り、光架橋性アミノ酸の導入部位をさらに拡大して、Hrd3全体に広げていく。Hrd3にはレクチン様タンパク質で基質認識に関わるYos9との結合部位もある。架橋産物の中にはYos9が含まれる可能性がある。Hrd1とHrd3、Yos9とHrd3についてそれぞれ特異的且つ直接的な相互作用をウエスタンブロッティングで確認する。さらに先に記したとおり紫外線の照射条件の検討を引き続き行う。現在は主に細胞に紫外線を直接照射しているが、より精製度の高い小胞体に照射するなど条件を検討して、架橋効率の上昇を目指す。さらに基質をHrd1複合体上に蓄積させた条件でHrd1-Hrd3相互作用部位のマッピングを行う。具体的にはCdc48/p97変異、およびプロテアソームの変異を利用する。特に先述の通り、Cdc48/p97変異によってレトロトランスロケーションを停止させると、Hrd1とHrd3の結合が強くなることを既に免疫沈降実験によって示しているので、相互作用するアミノ酸部位、相互作用強度に変化があることが期待される。
|