小胞体内腔の構造異常タンパク質は、小胞体膜をこえてサイトゾルへ逆行輸送(レトロトランスロケーション)され、ユビキチン・プロテアソーム系によって分解される。この分解系はER-associated degradation(ERAD)と呼ばれており、小胞体のタンパク質品質管理機構で必須の役割を担っている。ERADにおいて中心的役割を果たすのが、6回膜貫通E3リガーゼであるHrd1からなる複合体である。Hrd1複合体は小胞体内腔における基質認識、サイトゾルにおけるユビキチン化を行うだけでなく、基質のレトロトランスロケーションも促進すると予想されているが、一連の反応における複合体の構造変化など、ダイナミクスは全く解析されていない。本研究では、Hrd1と基質認識サブユニットHrd3の相互作用に着目し、基質のフラックスに依存したHrd1-Hrd3相互作用の変化を、in vivo部位特異的光架橋反応法によって解析することを目的とした。 Hrd3に細胞内で光架橋性のアミノ酸を導入して、Hrd1との相互作用の検出を試みた。Hrd3と架橋されるタンパク質は複数検出されたものの、Hrd1との架橋を検出するには至らなかった。そこで、レトロトランスロケーション停止させた時、Hrd3-Hrd1相互作用、およびHrd1複合体全体がどのように変化するのか、生化学的な解析を試みた。その結果、プロテアソーム、E3リガーゼ、基質認識因子からなる巨大中間複合体の同定に成功した。
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