本研究では月マントルの組成分布と熱進化を観測的に制約するために,海の溶岩流の組成推定を行い,マグマ噴出年代との関係を調査した.その結果,嵐の大洋・雨の海領域では23億年前にチタン量の増加が起こったことがわかり,これはマグマソースが変化したことを示している.一方,他の領域では増加は観測されなかった.噴出年代の分布から嵐の大洋・雨の海領域では23億年前以降に一時的にマグマ噴出量が増加したことが知られている.これらの結果を統合して我々は,嵐の大洋・雨の海領域直下のマントルにおいて23億年前にチタンを多く含むホットプルームが発生し,火成活動のピークと高チタンマグマの噴出を引き起こしたと推定している.
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