研究課題/領域番号 |
25870315
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研究機関 | 中部大学 |
研究代表者 |
西本 和見 中部大学, 全学共通教育部, 講師 (30586748)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 経済学史 |
研究実績の概要 |
本年度の研究実績の概要は以下のとおりである。 ・1951年出版『社会的選択と個人的評価』の再考 本年度では、アローが1951年に出版した『社会的選択と個人的評価』の第1版を議論の出発点にすえ、アローの初期経済思想を考察した。同書は不可能性定理を証明した部分に該当する1章から5章が有名で、6章と7章はあまり注目されてこなかった。しかし6章、7章に注目し、そこから社会の在り方もしくは社会秩序についての当時の彼の思想を考察した。その結果、次のような成果が得られた。 『社会的選択と個人的評価』では、個人の集合体としての社会は社会的厚生関数(Social Welfare Function)として定式化される。このアイディアはすでに30年代にA. バーグソンにみられるが、6、7章でアローは2度にわたってバーグソンの社会的厚生関数との違いを強調している。この点はこれまで指摘されてこなかった。しかし、アローの初期経済思想を考えるうえでバーグソン流の社会的厚生関数とアローのそれとの違いは重要である。なぜならアローの関数のしくみでは、社会が存在しており、個人と個人ないし個人と社会との間の比較によって個人が意見を再検討できる余地がある。6、7章では不可能性定理を乗り越える方策が議論されるが、この関数の認識の違いにアロー独特の社会認識があり、ここからアローの社会観と現代経済学に留まらない思想の射程の広さを示すことができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
11月より体調不良により研究を中断せざるを得ず、11月以降年度末までに予定していた研究会報告および翌年度6月に開かれる予定の学会報告をいくつか断念することとなった。それにより、当初予定していた今年度の研究期間での研究ができなかったこと、そしてそれによって予定していた研究成果を十分に出すことができなかった。ただし、アローの初期思想についての共著論文を発表することができ、またアローと関係の深いセンの報告を行うことができたため、正味の研究期間に比して一定の成果はあったものと考える。
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今後の研究の推進方策 |
今後は産休育休後の補助事業延長により、遅れを取り戻す予定である。 また、復帰後はベッカーやブキャナンの考察から行う予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
11月より体調不良により研究を中断せざるを得ず、予定していた研究会報告および学会報告を断念したため、旅費等に残額が生じた。
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次年度使用額の使用計画 |
平成27年度は産休育休を取得する予定のため、主に資料収集・資料整理に利用する。および5月の学会出張に使用する。
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