研究課題/領域番号 |
25870315
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研究機関 | 中部大学 |
研究代表者 |
西本 和見 中部大学, 全学共通教育部, 講師 (30586748)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 社会的選択論 / 経済学史 |
研究実績の概要 |
平成28年度の研究実績の概要は以下のとおりである。 本年度は、アロー『社会的選択と個人的評価』とブキャナン、タロック『公共選択の理論』の比較を通じて、彼らの経済学観の異同に関する研究を行った。先行研究にあるように、アローは『社会的選択と個人的評価』において、社会的選択論で議論されるような不可能性定理を超えた、倫理的な観点からの選択行為と社会秩序の結びつきの可能性を示していた。それは、選択肢と直接関係のない市民の「社会的態度の類似性」という非経済学的な要素であった。『社会的選択と個人的評価』で扱われた第6章と第7章の言説は散逸的で彼の結論といえる内容ではなくアイディアの1つと述べた方がよいかもしれない。しかしこれらの章で述べられていることは、彼が後年「市場がどんな問題にとっても十分な解決策となっているとは思えない」と言及するように、同書における現代経済学を前提にした不可能性定理の結論に留まらない思考の射程の広さを示しているといえる。 他方、ブキャナンとタロックによる『公共選択の理論』は、従来アロー以降の社会的選択論とは一線を画すとの指摘がされてきた。それは、彼らが自らの研究を新古典派経済学と異なるものとして位置付けると同時に、アローとも異なる位置に置いてきたことからも見て取ることができる。しかし、本研究では、前述のアローの広範な経済学観とブキャナンとタロックにおける市場や個人主義の見方にはある共通項があり、社会的選択論と公共選択論の枠組みに相互対話する可能性があるという指摘を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
研究課題進行中に産休育休が入ったことにより、およそ1年遅れたことに加え、本年度は研究成果の発表として学術論文を発表する予定が発表までに至らず、予定していた成果を十分に上げることができなかったため。
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今後の研究の推進方策 |
現在未刊行の論文を異なる媒体で発表することを検討する。また、その一部を共著の著作の一部に組み込むことで成果を発表する。それと同時に現在進行中の研究を進めることで、平成28年度の遅れを取り戻す。
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次年度使用額が生じた理由 |
研究計画段階で予想していた資料調査用旅費が前年度に少なくなったため、今年度の繰り越し額が多かった。今年度は資料整理で物品費と謝金、研究発表の旅費に使用したが、繰り越し分が多くなった。次年度は資料整理が全て終わっていないので、その分の資料費、印刷関連費と資料整理が必要となる。また、研究発表や国内資料調査の旅費等を見込んでいる。
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次年度使用額の使用計画 |
次年度は、7月までに資料整理を終える予定で計画を進めている。また、それ以外の印刷関連費、旅費、図書費は年度中通じて都度使用する予定である。
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