民間企業が運営する駐車場の過去2年間の精算データを用いて,駐車利用実態を分析した.その結果,利用頻度の高い人は合理的に改定後に安くなる駐車場に変更する一方,初利用者は幹線道路沿い(駐車しやすい環境)の駐車場を利用する傾向があることが分かった.他の運営駐車場の利用実態は把握できておらず限定的ではあるが,これは予約システムや情報提供によって利用者を誘導できる余地があると考えられ,前年度に検討した予約システムの導入可能性や効率的な駐車場運営について企業担当者と議論できた. また,駐車時間に及ぼす料金改定の影響分析として,駐車場の利用率などで1000箇所以上の駐車場を分類し,地区特性との関係性を確認した.その後,各分類ごとの駐車場利用特性に応じた料金感度の把握として,生存時間モデルにて駐車時間モデルを構築した.駐車場の料金体系には時間単価と上限価格の設定があり,駐車時間は複数のピークが確認されたため,潜在変数にて複数の時間モデルを混合し,パラメター推定を行った.その結果,長時間利用者は短時間利用者と比較して時間単価に関する感度が高く,上限価格の設定に対するお得感が現れていると解釈でき,興味深い推定結果が得ることができた. 実際に駐車場予約システムを導入するには利用者の理解,移動時や外出時の時間変動や不確実性に対処する必要があり難しい状況であるが,今後の駐車場運営手法として,精算データを活用し,料金設定の効果をシミュレーションする有効性は運営者の理解も得られ,継続的に検討することとなった.
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