研究課題/領域番号 |
25870321
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研究機関 | 名古屋工業大学 |
研究代表者 |
白松 俊 名古屋工業大学, 工学(系)研究科(研究院), 助教 (80548595)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | linked open data / 住民参画 / 市民協働 / シビックテック / Webインテリジェンス / 情報構造化 / コンサーンアセスメント |
研究実績の概要 |
社会問題の構造を共有化するため,前年度に設計したドメインオントロジーを発展させ,社会課題とその解決目標のLODを編纂するシステムをWebサービス化し,外部公開した.社会課題の多くは複雑に絡み合い,利害関係者が多様であることから,住民,行政,企業,専門家,技術者など幅広い層の組織横断的な協働が必要となる.従来のSNSやソーシャルメディアはリアルタイム性に重点が置かれ,「誰がどの課題をどのようなアプローチで解決しようとしているか」を共有する機能を持たなかったため,潜在的な協力者の探索が困難であった.本年度は,社会課題とその解決目標をLinked Open Data (LOD) として公開・共有することにより,似た目標を持つ他主体を検索可能にし,公共圏での協働による問題解決を促進するWebサービス「ゴオルシェア」を開発し,http://radish.ics.nitech.ac.jp/goalshare/?lang=ja にて外部公開した. 方向性の似た主体を検索可能にするために,目標間の類似度計算を精緻化した.具体的には,目標階層構造における上位目標や部分目標のコンテキストを考慮した類似度計算手法を開発した.協働促進に適したパラメータ設定を求めるため,上位目標と下位目標のバランスを変えて評価実験を行った.これにより,上位目標の重みを大きくした方が,より協働の可能性ある結果が提示できることを明らかにした. また,シビックテック分野への実応用を目指し,Code for Nagoyaが開催した2回のシビックハッカソンでゴオルシェアを試運用した.さらに,バックキャスティングに基づく課題解決シナリオとの関連性を調査し,ゴオルシェアの拡張を検討した. これらに関連する成果を,国際会議IFIP ePart 2014, IEA/AIE 2014,英文論文誌IJACSA,その他国内会議で発表した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
試作段階ではあるがWebアプリケーション「ゴオルシェア」を公開し,Code for Nagoyaが主催する2回のシビックハッカソンで実社会の課題についての開発目標を構造化する試運用を行った.Facebook等のSNSと紐付いたアカウントでの入力と,ログインせず匿名での入力を選択可能にすることで,住民がクラウドソーシング的に社会問題を構造化するための機構を整備できた.また,バックキャスティングにおける課題解決シナリオの構造化手法を取り入れた拡張を検討したことで,サステイナビリティ学などの知見も取り入れた新たな展望を着想することができた.他にも類似度計算の精緻化等の手法の改良を行い,ここまでに達成した成果を国際会議,英文論文誌,国内会議で発表しており,おおむね順調に進展していると考える.
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今後の研究の推進方策 |
ゴオルシェアの実社会応用に向けて2回のシビックハッカソンで試運用を行った結果,一旦構造化した課題解決シナリオを討議により再検討し,その討議内容も含めて構造化する機構の必要性が明らかになった.平成27年度は,バックキャスティングや議論支援,ファシリテーション等に関する従来研空も踏まえ,ゴオルシェアの上で主体の「立ち位置」にあたるコンテキストの構造化をより効果的に行えるよう,発展させる予定である.さらに,社会問題を解決するためのニーズと,技術やオープンデータ等のシーズをあわせて構造化することで,より実際のシビックハッカソンに適合したシステムへの拡張を検討中である.さらに,ニュース記事などのテキストを利用した構造化手法についても引き続き検討する予定である.
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