研究課題/領域番号 |
25870325
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研究種目 |
若手研究(B)
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研究機関 | 三重大学 |
研究代表者 |
田部井 賢一 三重大学, 医学(系)研究科(研究院), 学術研究員 (60609684)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 認知症 / 音楽療法 / 神経心理検査 / 脳イメージング |
研究概要 |
認知症患者数は、現在日本で220万人を超え、2050年には全世界で1億人を突破すると予測されており世界的な問題となっている。音楽は妄想や興奮状態などの認知症の心理症状の緩和に対する非薬物療法として、特養老人ホームやデイサービスなどで頻繁に使用されている。症状改善に関する症例報告は多数発表されているが、その機序はほとんどわかっておらず、医学的に妥当な方法を用いて音楽の有効性を明らかすることは、認知症患者数が増大している現在において急務となっている。本研究の目的は、認知症患者を対象に音楽による中核症状の他に妄想や興奮状態などのBPSD(認知症が原因で現れる行動・心理症状)の緩和と、健常高齢者を対象に音楽による認知症の予防効果の機序を経時データから示すことである。 今年度は、音楽療法介入群として神経内科、精神科、脳外科で認知症の治療をしている患者、コントロール群としては認知症の診断がつき、当院物忘れ外来に受診している患者を対象に研究をおこなった。その結果、欧米で最も頻繁に用いられている、介護負担を測定する尺度であるZarit介護負担尺度の経時的変化がみられた。つまり、音楽療法介入群のみで音楽療法介入開始時から数値が3ヶ月後の評価時で上がり、6ヶ月後の評価時で下がった。この間、患者のBPSDには有意な変化がなかったことから、患者の症状が悪くなり、介護者の負担が増えたわけではない。そのため、患者には変化はなかったが、介護者自身に変化があったことが考えられ、音楽療法が患者のみならず介護者負担にも影響を与えることが示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究の独自性である、音楽療法大学病院内で実施し,臨床医の協力のもと医学的に妥当な方法論を用いて音楽の有効性を検討することができている。ただし、対象人数が当初の予定にはまだ達しておらず、今後も対象人数を増やす努力を続けていく。
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今後の研究の推進方策 |
当初の予定通り、対象人数を増やしながら、音楽療法の長期介入を進めるとともに、神経心理検査並びに脳イメージングのデータを蓄積していく。また、健常高齢者を対象に、音楽による認知症の予防効果の機序に対する経時データも蓄積していく。
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