研究課題/領域番号 |
25870328
|
研究種目 |
若手研究(B)
|
研究機関 | 三重大学 |
研究代表者 |
大隈 貞嗣 三重大学, 医学(系)研究科(研究院), 助教 (70444429)
|
研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2015-03-31
|
キーワード | 肥満 / インスリン抵抗性 |
研究概要 |
われわれは独自に血管血球系特異的p38αノックアウト(KO)マウスおよびマクロファージ特異的p38αノックアウト(KO)マウスを作製し、高脂肪食による肥満およびインスリン抵抗性の惹起における血球およびマクロファージにおけるp38αの機能を検討した。その結果、血管血球系特異的およびマクロファージ特異的p38αKOマウスのいずれにおいても、高脂肪食による肥満およびインスリン抵抗性の惹起を抑制することを明らかにした。血管血球系特異的p38αKOマウスにおいては、脂肪組織での炎症性サイトカインおよびケモカインの発現が抑制されていた。また脂肪組織浸潤炎症性マクロファージが著名に減少していた。脂肪組織浸潤炎症性マクロファージおよび腹腔滲出細胞における遺伝子発現を検討したところ、ケモカインレセプターの発現がいずれも減少しており、これによって血管血球系特異的p38αノックアウトマウスにおいてはマクロファージの浸潤能が低下している可能性が示唆された。また、肝においては高脂肪食によってKupffer細胞マーカーの発現が増大するが、これも血管血球系特異的p38αKOマウスにおいて抑制されていた。この時高脂肪食による脂肪肝が抑制されていたが、興味深いことにこの肝においては通常食高脂肪食いずれにおいてもCD36スカベンジャー受容体の発現が減少しており、これが脂質代謝に影響を与えている可能性がある。CD36の肝における発現はマウスの肥満制御に関与するとの報告があり、p38αはインスリン抵抗性においては脂肪組織、肥満においては肝でそれぞれのシグナルをコントロールしていることが示唆された。また予備的だがp38α阻害剤の投与によって高脂肪食によるインスリン抵抗性が改善することを見いだした。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
ノックアウトマウスの繁殖に時間がかかっており、やや実験作業の進行が遅れている。血管血球系特異的およびマクロファージ特異的p38αKOマウスの高脂肪食における基本的な代謝変化については明らかにできた。肥満およびインスリン抵抗性の改善に関してはマクロファージ特異的p38αKOマウスにおいても同様に確認でき、マクロファージにおけるp38αが肥満及びインスリン抵抗性制御の中核にあることが示唆された。血管血球系特異的p38αKOマウスに関しては、脂肪組織浸潤マクロファージの解析が進んでいるが、マクロファージ特異的p38αKOマウスに関しては現在サンプル準備中である。また肝に関しては、Kupffer細胞マーカーおよび脂質代謝系遺伝子といった遺伝発現解析は進んでいるが、細胞レベルでの解析はサンプル準備中である。
|
今後の研究の推進方策 |
基本的には、当初の計画に沿って進める。ただし細胞の単離などに困難がある場合、細胞マーカーの発現解析をもって代替することも検討する。また血球系特異的およびマクロファージ特異的p38αKOマウス双方の繁殖効率に応じて、一方のマウスを優先して解析を進める。現時点では血球系特異的KOマウスが先行している。脂肪組織における慢性炎症の制御と同様に、p38αによる肝脂質代謝遺伝子の制御はこれまで報告がなく、新規な肥満制御システムとしての重要性が示唆される。またCD36は人においても肥満との関連が報告されており、医学的な応用可能性が高いと考えられるため、特に注目して解析を行う。
|