本年度の研究活動実績は、地域福祉計画の策定の仕事依頼があったS市をフィールドとして、昨年実施した各種アンケート調査の結果と、この間整理してきた政府統計の結果とを整合させ、S市の地域福祉計画策定作業に活用し、本計画で進めてきた研究結果を政策立案のなかで検証することができたことである。また、その結果内容を、年度末の英国渡航において報告する機会を得て、今後の研究への多くの意見を受けることができたことにある。 昨年度、たまたまS市より地域福祉計画の策定という、政策立案に協力する仕事をうけ、S市において市民、中学生、介護福祉事業所に対するアンケート調査と、S市内の全自治会における住民へのヒアリング調査を実施する機会を得た。 これらの調査の結果を、行政の人口動態のデータ、市の介護福祉事業所関連のデータ、同じく市の商業施設に関するデータと掛け合わせることで、地域の高齢化にしたがって地域の生活基盤が弱まることによって、地域の社会関係資本(ソーシャル・キャピタル)に影響が出ていることが見られた。また、ヒアリング調査を通して、その影響が生じる状況を具体的に把握できる機会が得られた。 年度末に渡英し、研究に対する助言者と今回の成果について打ち合わせをし、アンケート調査による量的調査だけではなく、ヒアリング調査による質的調査を実施できたことから得られた知見が、今後の研究に多くの示唆を与えてくれたことを確認した。 S市でのアンケート調査とヒアリング調査は、その権利がS市に帰属するため、現在S市で手続きをすすめ、研究成果として論文化するための準備を進めている。ただし、本年度の研究で得られたS市についての知見は、S市の『第3次地域福祉計画』のなかに一部記述し、同計画書の政策立案の際の基礎データとして使用した。
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