研究課題
今年度は、二つの方針で研究を進めました。一つは、臨床研究における創薬ターゲットの探索でした。婦人科の臨床研究において明細胞癌の化学療法に対する反応を予測する共同研究に取り組みました。この研究では公開されているNCBI GEOデータベースから卵巣癌の遺伝子発言データを全て取得して、一部のデータから化学療法反応を予測するモデルを作成しました(実施:共同研究先)。モデル作成方法として、遺伝子発言データを繰り返しサンプリングして発言に有意差が示される遺伝子を選択するSAMroc方法を用い、選択された遺伝子の発言データを、発言データと反応パスウェイを結びつけるssGSEA法に入力しました。出力されるパスウェイスコアを組み合わせて一検体ずつのスコアを集計してから、各種化学療法に臨床反応を示すと示さない群の分布を解析しました。その結果、本研究で導入したスコアの有用性が示され、さらに、検証用の外部データセットにおいてもスコア法の有用性を再現できました。もう一つは、chemogenomicモデル生成方法の研究を進めました。この研究はスイス連邦工科大学チューリッヒ校との共同研究の連携によるプロジェクトです。従来のchemogenomicモデルは、数万または数十万の化合物とタンパク質の相互作用データを用いて複雑なモデルを計算するものです。しかしながら、本研究では膨大なデータにおいて重要な相互作用を選択する方法を開発しており、解釈可能なモデルを目指している。特に計算創薬においてモデルの解釈性は重要であります。現在、提案手法を実験で評価しているが、途中結果として予測精度の高いモデルを実現できることを確認している。
2: おおむね順調に進展している
ネットワーク周辺情報を用いる方針は現在中止しているが、chemogenomicモデル相互作用例の選択方法研究はとても有効だと考えられ、この方法による生成されるモデルは、解釈不可である複雑なモデルより役立つと期待する。遺伝子発言データを用いる研究は順調に進んでいる。
今後の研究は三つの方針に進める予定である。今年度実施したchemogenomicモデル生成方法について、さらなるデータセットに対してモデル生成実験を行い結果を評価する。開発では二つの公開データソースを用いたが、各データベースの相互作用例数が数万程度である。数十万~数百万程度のデータセットに手法を評価する必要がある。さらに、モデル構築法のwet実験による実証を行うべきことであり、共同研究先と実証実験について検討を行う。臨床検体の遺伝子発言データ解析について、データ処理基盤と解析基盤を完成して、新たな標的タンパク質を同定する研究に取り組む(応用分野:癌。共同研究型)。標的タンパク質を同定できれば、開発してきた相互作用予測基盤を用いて標的に結合する化合物を探索できる。中止しているネットワーク情報周辺情報による計算創薬方法開発について、計算方法(理論)を改善し再開発に取り組む。
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Gynecologic Oncology
巻: 141 ページ: 49-56
http://www.sciencedirect.com/science/article/pii/S009082581630052X