本課題の目的は、在宅療養生活をおくる慢性閉塞性肺疾患(COPD)患者の骨格筋の形態学的・神経学的・生化学的特徴を加齢性筋肉減少症(サルコペニア)との関連性を含めて検証した上で、本研究在宅COPD患者に対して新しい骨格筋トレーニングプログラムを導入し,継続させることによって生じる身体機能および精神機能における効果を明確にすることであるが、平成25年度の成果内容は、COPD患者の骨格筋の調査であり、予想された結果の通り、COPDでは形態学的、機能的に骨格筋障害が生じていた。平成26年度の成果内容としては、25年度から引き続き実施しているCOPD患者の骨格筋調査が30例終了し、在宅での骨格筋電気刺激トレーニングの介入を開始した。当初の研究計画では、1年間のトレーニング計画を予定していたが、途中脱落者や、多くの対象者が、病状の悪化、それによる入院などにより当該期間、継続してプログラムを実施することが困難であった。そのため、当初の計画にあった介入期間を3ヶ月に変更して実施することとした。 最終年度である27年度の成果は、3ヶ月間にわたる在宅での骨格筋電気刺激トレーニング介入研究を実施し、その結果、本トレーニングプログラムが、大腿四頭筋の筋肥大および筋力増強をもたらし、またそれによる運動耐容能の改善が認められた。 本研究の独創的な方法である患者の負担が少ない在宅での骨格筋電気刺激トレーニングの継続において一定の効果が示され、身体機能における負の連鎖に歯止めをかけ、今後の在宅医療の新たな一手段となることが期待される。これらの知見は、呼吸不全患者はもとより、寝たきり高齢者や心血管系合併症、整形外科的拘束によって運動が制限される人々などに運動機能改善効果を享受しうる可能性を示唆しており、介護予防,予防医学・治療医学の観点からも今後の研究が期待される。
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