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最終年度である本年度は，まずは昨年度に引き続いて，双対性を利用した確率微分方程式（Langevin方程式系）に対するデータ解析手法の研究を進めた．結果として，これまでに開発した系統的な双対過程の導出法に加え，時間変数に対しても新しい双対変数を導入する手法を提案した．これにより，確率微分方程式におけるさまざまな時間間隔での統計量の評価を，ひとつの双対過程の解を用いておこなえるようになった．以上の理論的な進展に基づき，アンサンブル・カルマンフィルタに似た枠組みを双対性の利用によって構築し，従来のアンサンブル・カルマンフィルタよりも高速に状態推定をおこなえる数値計算手法を提案した．非線形性を有する確率微分方程式系を例に数値実験を実施し，提案手法の有効性については確認している．この研究成果は学術論文としてまとめられ，すでに出版済みである．
続いて，離散状態をもつ確率過程である出生死滅過程に対する双対性の利用可能性を検討した．確率微分方程式に対しては，その双対過程として出生死滅過程を導出することで，平均や分散といったモーメントを計算できることがわかっていた．しかし，出生死滅過程同士の双対性を単純に利用する場合には，双対過程を解くことがもとの出生死滅過程のひとつの遷移確率を計算できることに対応するだけであり，双対性の利用の利点があまりない．
検討の結果，出生死滅過程の反応速度定数について双対変数を導入することで，双対性を利用する大きな利点が出現することを見出した．具体的には，双対過程のひとつの解が，元の過程におけるさまざまな反応速度定数における遷移確率に対応する．この手法を利用することで，時系列データからの反応速度定数の推定を高速におこなう手法の基盤を整えることができた．
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