2010年から無施肥で水稲を栽培してきた圃場において、水稲植栽区と無植栽区を各2連で設置し、作付け前と作付け後に作土を採取するとともに、水稲収量を測定してきた。無施肥栽培5年目となる2014年の粗籾収量(ヒノヒカリ)は639 g m-2となり、無施肥栽培1年目の粗籾収量(630 g m-2)と同等の収量を維持していた。さらに圃場の一部の区画で、尿素と塩化カリウムの被覆肥料を組み合わせた施肥試験を行い、成熟期の生育量を評価した結果、2013年(ヒノヒカリ)はN単用区>N+K混合区>K単用区と無施肥区、2014年(ミナミユタカ、ヒノヒカリ、たちすずか、クサノホシ)はN単用区>K単用区と無施肥区となった。 当初、植栽区と無植栽区の作土のカリウム動態を調べることによって、水稲のカリウム獲得様式を評価する予定であった。しかし試験圃場の1 アール弱の区画内でも作土のカリウム含量の空間変異が大きかったため、植物によるカリウム吸収の影響を定量的に評価することは難しいと判断された。そこで、2013年11月末に試験圃場に隣接する5筆の大区画水田から圃場あたり約50点の作土を10×10mの密度で採取し、交換態カリウムの空間変異の生じる要因を評価した。交換態カリウム含量は、全炭素と正の相関(0.60)を示し、砂含量とは対応しなかった。土壌の陽イオン交換容量は、全炭素と正の相関(0.59)、砂含量と負の相関(-0.71)を示した。交換態カリウムは、有機物の持つ負荷電量によって規定されており、このことが粘土の持つ負荷電量の影響を強く受ける交換態Ca及びMgとは異なる空間分布を示す要因であると考えられた。また、供試試料に関しては、Bray-2抽出液(0.1M HCl + 0.03M NH4F)や酸性シュウ酸アンモニウム抽出液でも1M酢酸アンモニウム溶液による抽出とほぼ同量のカリウムを回収できた。
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