研究課題/領域番号 |
25870341
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研究機関 | 岡山大学 |
研究代表者 |
村田 健介 岡山大学, 社会文化科学研究科, 准教授 (00551459)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 個人情報 / 所有 / 人格 / ビッグデータ / フランス / 国際情報交換 |
研究実績の概要 |
平成26年度においては,年度当初にフランス出張を行い,情報の保護のあり方に関わるフランス民法・知的財産法関連の文献,特に我が国で入手困難なフランスの博士論文等を入手し,また,知的所有権法及び民法の双方の関連領域に研究関心を寄せている,パリ政治学院のMichel Vivant教授,パリ第2大学のLaurent Pfister教授,ポワティエ大学のNicolas Vinctin教授ヘのインタビューを行った。そして,それらを踏まえて文献の検討を進めるとともに,本研究に関連する国内の研究会等にも参加して,多角的な視点を得るよう努めた。 これらの結果,単なる情報の保護と個人情報の保護とは,保護のあり方が異なるべきであるという一般論を認めることはできるとの示唆を得た。すなわち,単なる情報は公共財と捉えられ,その保護については,それを保護することが公共の利益に沿うかぎりで認められるという(日本法でいう)インセンティヴ論型の制度設計が,個人情報は単なる情報とは異なり人格に結びついた財産であると捉えられ,その保護については,当然に排他的権利が認められるという自然権論型の制度設計が望ましいと考えられる。フランスの伝統的な学説によれば,前者のモデルが発明,後者のモデルが著作物であり,特許法及び著作権法は制度設計の参考になると考えられる。 しかし,そもそも,単なる情報と個人情報とをどのように区別するかということが,フランスでも未解決の問題として存在していることが分かった。個人情報の保護に関してどのような制度設計をすべきかに加え,我が国でも個人情報保護法の改正が進められ,個人情報の範囲の明確化が試みられているものの,フランスの状況に照らしこの法改正をどう評価するかも,平成27年度の課題となる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成26年度においては,当初長期の在外研究を計画していたが,勤務先との関係でそれは行えなかった。しかし,年度当初に行ったフランスへの短期の出張の際,集中的に文献収集及びフランス人研究者へのインタビューを行えたこと,それらを踏まえた文献検討も進められたことから,「おおむね順調に進展している」と考える。
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今後の研究の推進方策 |
平成27年度においては,これまでの検討結果を踏まえつつ,論文執筆にあたることにしている。 当初計画以来の,個人情報の保護のあり方についてはもちろんのこと,個人情報の範囲をいかに理解すべきかという問題についても,フランス法から示唆を得ることとしたい。 なお,論文執筆にあたって,補充的に検討すべき事項が生じ,フランス人研究者へのインタビューやフランスでの文献収集を要すると判断した場合には,短期のフランス出張を行うこととする。
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次年度使用額が生じた理由 |
平成26年度に購入予定だった電子機器の消耗品については,平成26年度中は消耗せずに済んだため,購入することを要しなかった。 また,平成26年度当初のフランス出張では,平成26年度交付分に加え,平成25年度交付分の残額を含めて執行したが,出張が長期ではなかったこともあり,なお残額が発生することとなった。
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次年度使用額の使用計画 |
平成27年度においては,平成26年度に購入せずに済んだ電子機器の消耗品の消耗が予想されるため,その購入に充てる。また,論文執筆に際して再度のフランス出張が必要となった場合の経費に充てる予定である。
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