研究課題/領域番号 |
25870345
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研究種目 |
若手研究(B)
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
瀧 宏文 京都大学, 情報学研究科, 助教 (40467460)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 医用画像 / 医用超音波イメージング / 乳がん / 乳がん検診 / 乳がんスクリーニング |
研究概要 |
現在乳がん検診にはマンモグラフィーが用いられている。マンモグラフィーはX線で乳がんに併発する微小石灰化を検出しているが、放射線被ばくが不可避であるだけでなく、乳腺が豊富な若年女性では微小石灰化の検出が困難であり、若年女性は検診の適用外とされている。本研究は周波数領域干渉計法と適応型信号処理を使用することにより、超音波を用いて乳がんに併発する微小石灰化を高感度で検出することを目標としている。本手法では微小石灰化からの超音波エコー波形を推定することが重要である。平成25年度は、微小石灰化エコーを理論式を用いて高精度・高速に推定することに成功し、日本超音波医学会大会にて発表した。本成果により様々な大きさの石灰化からのエコーを高精度で推定可能となり、提案法の微小石灰化検出能が大きく改善できると考えられる。また、本手法は他の生体組織の高分解能イメージングにも適用可能であり、生体組織の高分解能イメージングは乳がん検出に有効である。本手法の安定性改善法、測定深さに対応した信号処理法、推定電力精度改善法について検討を行い、IEEE EMBC国際会議で2件、IEEE Ultrasonics Symposiumで1件、日本超音波医学会基礎技術研究会で1件、USE2013で1件発表した。さらに、測定方向以外からの妨害波抑圧の可能性を検討し、IEEE Ultrasonics Symposiumで1件、USE2013で1件発表した。これらの発見・検討は超音波を用いた乳がん検診の高精度化に必要となる技術であり、安全・安価で若年女性にも適用可能な乳がん検診の実現を目指すうえで重要であると考えられる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成25年度は、0.1 mm, 0.2 mm, 0.3 mmの微小ガラス球を用いたファントムの製作に成功した。ガラスはカルシウムと同様に生体組織と大きく異なる音響インピーダンスを持つため、微小ガラス球に超音波を照射した場合微小石灰化からの超音波エコーと同様の波形が返ってくると考えられる。商用超音波診断装置を用いて本ファントムを測定することにより、微小石灰化エコーと同様の波形を実験的に得ることに成功した。また、Dr. Haiatの研究室を訪問し、Faranの理論モデルに基づく微小石灰化エコーの生成に成功した。本手法により微小石灰化エコーを理論式から高速に生成することが可能となり、実験で得られたエコーと比較し特性比較を行うことができた。さらに、B-mode像上で描出困難な微小ガラス球の超音波データを生成し、提案する周波数領域干渉計法を用いたイメージング法を適用した結果、微小ガラス球領域を明瞭に描出することに成功した。 これらの成果は査読付きの国際学会であるIEEE Ultrasonics Symposium, Annual Conference of IEEE Engineering and Biomedical Societyにおいて計4件発表した他、日本超音波医学会等の国内学会・研究会発表を通して成果を広く社会へ発信した。上記のことから、交付申請書に記載されている研究実施計画に照らし、おおむね順調に進展していると評価した。
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今後の研究の推進方策 |
微小石灰化が単独で存在する場合の検討を行っているが、実際の乳がんでは複数の微小石灰化を伴っていることが多い。そのため、微小石灰化が複数存在する場合に描出可能となるよう提案法を修正する。複数の微小石灰化が近接して存在する場合、相関性干渉波が複数存在する条件となり、提案法では信号同士の打ち消しあいにより微小石灰化の描出能が低下すると考えられる。そのため、信号同士の打ち消しあいを抑圧する手法である周波数平均に用いる帯域幅を最適化する。 また、現在生成している微小石灰化エコーは単一石灰化からのエコーであり、石灰化間の相互作用などは考慮されていない。複数の石灰化が存在する条件下での石灰化エコーについて考察を行い、適切な周波数帯域幅の選定を行うとともに、効率よく送受信可能な超音波探触子を購入する。豚生体組織を用いて乳房内石灰化のファントムを作成し、提案法の有効性について実験検証を行う。 さらに、超音波探触子を走査し3次元測定を行うことを想定し、シミュレーションデータを作成する。作成したデータに提案する周波数領域干渉計法に基づく微小石灰化検出法を適用し、3次元測定特有の問題点を把握し、問題解決法を探索する。特に、測定平面間の間隔最適化や測定平面間の信号処理について主に検討することを予定している。さらに、探触子を実際に走査し3次元データを取得し、上記の修正を行った周波数領域干渉計法に基づく微小石灰化検出法の石灰化検出能について検討を行う。
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次年度の研究費の使用計画 |
論文執筆用のデータ収集がずれ込み、平成26年度に英文校正を行うことに変更した。そのため、英文校正費用分の未使用額が発生した。 平成26年度にこの未使用額を用いて英語論文の英文校正を行う。
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