研究課題/領域番号 |
25870347
|
研究種目 |
若手研究(B)
|
研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
田中 孝明 京都大学, 理学(系)研究科(研究院), 助教 (20600406)
|
研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2015-03-31
|
キーワード | 半導体検出器 / 放射線計測 |
研究概要 |
本年度はSOI技術を用いたピクセル型検出器 (SOIPIX) のエネルギー分解能向上に主眼を置いて研究開発を行った。エネルギー分解能の向上は、高感度の硬X線偏光観測を実現する上で必要不可欠であり、また、SOIPIXに関する他の応用を考えた場合にも欠かせない課題となっている。これまで、我々のSOPIXでは初段にソースフォロワを用いた回路で信号の読み出しを行っていた。初段の回路にフィードバック・キャパシタを追加することで電荷増幅器とし、できるだけセンサから近い段階で信号の増幅を行うように変更を施した。その結果、回路全体のゲインを約3倍に向上することに成功し、エネルギー分解能も5.9 keVのX線に対してFWHMで300 eVを達成することができた。これまでのソースフォロワを用いた回路では、エネルギー分解能は650 eVであったので、飛躍的に向上できたことになる。電荷増幅器の回路定数や素子内でのレイアウトについての最適化は未実施であるので、これを行うことでさらなるエネルギー分解能の向上が今後の課題である。 一方で、数多くの異なる素子を評価している中で、SOIPIXに関する課題も見えてきた。測定データを見ると、ピクセルとピクセルの間の領域では電荷収集効率が悪いようであることがわかったのである。これを詳細に調べるため、SPring-8において10ミクロン程度にしぼったX線ペンシルビームをSOIPIXの様々な場所に照射し、各場所における検出器レスポンスを調べた。データの詳細解析を現在進めている所であるが、ピクセル間において電荷収集効率が悪いという我々の仮説が正しいことがわかった。今後、実験結果に基づいて素子の改良を施す予定である。 これらの成果の一部については国際会議IEEE Nuclear Science Symposiumで口頭発表を行った。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
申請書に記した通り、偏光観測を実現するにはSOIPIXのエネルギー分解能向上が最も重要である。今年度に達成したエネルギー分解能によって、その目処がついたと言える。また、SOIPIX素子に関する他の開発要素についても、様々な測定や実験により、方策が明確になってきた。本研究の肝であり、また、最も時間がかかると思われる素子自体の開発を大きく進めることができたので、順調に進展していると言うことができる。
|
今後の研究の推進方策 |
初年度で成功した電荷増幅器を用いた回路の最適化を進める。まず、現存する素子の性能評価を進め、次に作成する素子に用いる回路パラメータを決定する。また、ピクセル間の領域において電荷収集効率が悪いという問題については、X線ペンシルビームを用いた実験のデータ解析を進める。そしてその結果に基づいて、特にインプラントの構造について改良案を作り、内部の電場構造などを計算し、実際に電荷収集効率が向上することを確認した上で、次に作成する素子のデザインに反映する。 ハードウェア開発と並行して、将来に向けて偏光計としての性能評価を行う。本研究で目指しているのはSOIPIX素子を複数枚積層した検出器であるが、各素子のエネルギー分解能やピクセルサイズは現在開発している素子に基づいて現実的な数字を仮定した上で、モンテカルロ・シミュレーションを用いて、偏光計として、どの程度の感度が達成できるかを調べる。また、今後、SOIPIX素子にどのような改善、あるいは、仕様変更が必要かまとめる。
|
次年度の研究費の使用計画 |
新たなSOPIX素子の製作およびそれを搭載する回路基板の発注を当初は初年度に行うとしていたが、ピクセル間において電荷収集効率が悪い問題を見つけたため、その解決策を見いだしてから発注を行うことにしたため、次年度使用額が生じた。 次年度に持ち越した額の大部分はSOIPIX素子の製作、あるいは、それを搭載する回路基板の製作に用いる予定である。それ以外の用途については当初申請した通りの用途で用いる予定である。
|