研究課題/領域番号 |
25870348
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研究種目 |
若手研究(B)
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
室伏 善照 京都大学, 医学(系)研究科(研究院), 研究員 (50448578)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 腎細胞癌 / エピジェネティクス |
研究概要 |
腎細胞癌(RCC)は全腎悪性腫瘍の約85%を占め、 初診時に約25%の症例が遠隔転移を有し、術後に約20%の症例で再発を認め、罹患例の約1/3が死亡に至る予後不良な疾患である。進行症例では抗VEGF療法が行われるが、 殆どの症例が治療抵抗性を示すため、新規治療薬の開発が急務である。本研究はRCCの遺伝子変異解析結果に基づいた新規標的分子のスクリーニングの有用性と標的分子のvalidationを行うことを目的とする。 1. 標的遺伝子候補の抽出: i)研究協力者による一次スクリーニング結果の解析をもとに標的遺伝子候補を抽出した。RCC組織において変異を認めるヒストン修飾酵素について先行検証を行い、一次スクリーニングの信頼性の確認を行った。対照的に、逆の作用を示す修飾酵素は逆の結果が導き出されると予想された。 ii)逆の作用を示すヒストン修飾酵素遺伝子を標的としたhairpinはVHL (+) コントロール細胞(VHL)と比較してVHL遺伝子変異を有するVHL-/- RCC細胞(Mock)において減少しており増殖抑制効果を示すことから、標的遺伝子候補の一つであると考えられた。 iii)現在、データ解析途中であるが、Mock細胞に増殖抑制効果を示す複数のヒストン修飾酵素遺伝子が有力な候補として挙がっている。 2. 標的遺伝子候補のin vitroにおけるvalidation(二次スクリーニング): i)Mock細胞とVHL細胞を用いて、標的遺伝子候補に対するshRNAを導入し、結果の再現性の確認をclonogenic assayにより 行った。また、shRNAも複数用いて再現性の向上をはかった。最有力の標的遺伝子候補においては複数のhairpinでの再現性は現段階では認められていないが、有用なhairpinでの再現性は高いという結果が得られた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の予定通り、一次スクリーニングにより複数のヒストン修飾酵素遺伝子が有用な標的遺伝子候補として抽出されている。さらにin vitroにおける二次スクリーニングを行った遺伝子候補においては、VHL (+) コントロール細胞(VHL)と比較してVHL遺伝子変異を有するVHL-/- RCC細胞(Mock)において有意な増殖抑制効果を示す結果が得られた。この結果はスクリーニングの有用性と信頼性を示すものと考える。また先行して有用な評価が得られた遺伝子候補については、Off Target Effectの検証が必須ではあるが、予想された結果が得られており、今後も研究計画通りに研究を遂行できるものと考える。
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今後の研究の推進方策 |
当初の計画通り、これまでに一次スクリーニングで得られた有用な標的遺伝子候補について二次スクリーニングを継続して行い、さらに絞り込みを行う。現在最も先行して評価・検討を進めている標的遺伝子候補については以下のように研究を推進する。i)有用なhairpinに対するshRNAのOff Target Effectの検証を行う。具体的には、hairpinの標的配列のcodon usageを変更することによりアミノ酸配列は同一であってもknock downは受けないcDNAを作製し、shRNAの効果(Mock 細胞に対して特異的な増殖抑制)が、同cDNAの発現により相殺された場合、Off Target Effectを否定できると考える。ii)すでに作製済みのpLKO shRNA plasmidをMock細胞に導入し、同細胞をヌードマウスの皮下に移植してin vivo 皮下腫瘍モデルを作製する。同様に、pLKO Tet-On shRNA plasmidを作製し、Tet-On systemによる標的遺伝子のshRNA mediated knockoutが可能なin vivo皮下腫瘍モデルを作製する。これらのin vivoモデルを用いて標的遺伝子候補のRCC治療に対する有用性の評価・検討を行う。その他の有用な標的遺伝子候補についても同様に評価・検討を行う。 以上の条件を満たした遺伝子に関しては、同じTet-On細胞を用いてエピジェネティックに制御を受ける下流標的遺伝子の探索を行う。
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次年度の研究費の使用計画 |
次年度は本研究の最終年度にあたり、標的遺伝子候補の有用性を示したいと考える。そのために前臨床モデルにおける評価・検討が必要であるが、 モデルの作製と解析には経費がかさむことが予想される。 当初計画した今年度の研究は計画通りかつ効率的に進捗できたため、予定していた使用額より経費をおさえることができた。そこで次年度の研究をさらに推進するため今年度の余剰額を次年度の使用額として計上したい。このことは本研究のよりよい成果につながるものと考える。 今年度に行った二次スクリーニングにてin vitroでVHL-/- RCC細胞(Mock)に対し細胞増殖抑制効果を示したエピジェネティクス関連遺伝子候補について、次年度にin vivo皮下腫瘍モデルを作製し評価・検討を行う。すでにこのための経費として次年度の使用額の1/3以上にあたる額を計上しているが、今年度の研究成果により有力な標的遺伝子候補が複数挙がっており、これらについても前臨床モデルにおける有用性の評価・検討を行うため、これに今年度の余剰額を充てる。
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