研究概要 |
ナノ金属と多孔性金属錯体(MOF)からなる複合物質はお互いの相乗効果により革新的な水素機能性材料になり得る可能性がある。平成25年度では三次元細孔を有するCu3(BTC)2(BTC=Benzene-1,3,5-tricarb oxylate) 有機構造体を(100)面の結晶面を有する立方体Pdナノ結晶の表面に被覆したMOF複合物質(Pd@Cu3(BTC)2)を作製し、その水素吸蔵特性について調べた。具体的には、粒径を制御する保護剤、結晶面を制御するキャッピング試薬を用い、Na2PdCl4をアスコルビン酸で還元することにより、はじめに立方体Pdナノ結晶を作製した。得られた立方体Pdナノ結晶の溶液にCu(NO3)2およびBenzene-1,3,5-tricarb oxylateを加え、加熱・撹拌することにより、Pd@Cu3(BTC)2ナノ複合物質を作製した。得られた複合物質の構造については、粉末X線回折(XRD)および透過型電子顕微鏡(TEM)を用いたエネルギー分散型X線分光(EDS)測定により調べた。また、水素吸蔵特性について調べるため、水素圧組成等温線(PCT)測定を行った。PCT曲線の結果、Cu3(BTC)2の被覆によってPdナノ結晶の水素吸蔵速度および水素吸蔵量が飛躍的に向上することを見出した。Cu3(BTC)2単独では水素を吸蔵しないことから、Cu3(BTC)2被覆によるPdナノ金属の水素吸蔵特性の飛躍的な向上は従来の常識を覆す発見であると共に、有用な触媒の開発に繋がる発見でもある。つまり、Cu3(BTC)2被覆Pdナノ金属が持つ優れた水素分子乖離能力及び水素原子との高い親和性により、当該新規複合物質は既存のPd触媒よりも高い触媒活性を示すことが期待される。また、水素吸蔵特性の飛躍的な向上はCu3(BTC)2被覆Pdナノ金属の構造特異性、つまりはPdナノ金属とMOF界面で起こる電子移動が大きく寄与していることを各種分光学的手法により解明した。
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