研究課題
本研究では、阿蘇火山中岳第一火口の湯だまり底下で平時から恒常的に発生しているごく小規模な熱水流入現象のプロセスとそのダイナミクスを明らかにすることで、その上位規模である土砂噴出や水蒸気爆発の現象理解を目指したものである。本研究課題の開始直後以降、阿蘇火山の活動が活発化し、湯だまりのない状態のまま2014年1月の火孔開口、そして、11月25日からは約20年ぶりとなる本格的な噴火活動の開始へと至った。2015年5月の火口底陥没イベントによって一連の噴火活動は一時的に終息したものの、9月14日、10月23日と相次いで大規模なマグマ水蒸気爆発が発生し、その後も規模の小さい水蒸気爆発が繰り返されている。噴火活動活発化の端緒であった2013年末から始まった短周期連続微動の振幅増加は、クラック状火道と火口底直下とをつなぐ領域で発生しており、火山性熱流体のフラックス増加による火道形成・拡大過程であったと理解された。時間経過とともに変化する振幅・卓越周波数に対して、Julian (1996) による非線形振動モデルを適用し、火道サイズ・流体圧力の変遷についての検討を行った。2015年9月、10月に相次いで発生したマグマ水蒸気爆発の直前にも連続微動の振幅変化が観測されていることから、火口浅部における火山性流体の挙動をリアルタイムで推定することで噴火活動予測の精度を高めることができるようになると期待される。他方、増強した空振観測点網により明らかになった0.5 Hz近傍にピークを持つモノトニック空振も、一連の噴火活動における特徴のひとつとして挙げられる。噴出する火山ガスや火山灰噴煙に駆動されるヘルムホルツ共鳴現象であると考えられ、卓越周波数の時間変化はた火道内空間スケール、すなわち、火孔拡大および破砕面深度の変化で説明される。
すべて 2015
すべて 雑誌論文 (2件) (うち国際共著 1件、 査読あり 2件、 謝辞記載あり 1件) 学会発表 (6件) (うち国際学会 1件)
火山
巻: 60 ページ: 275-278
Geophysical Research Letters
巻: 42 ページ: 5243-5249
10.1002/2015GL064466