研究課題/領域番号 |
25870353
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
大本 義正 京都大学, 情報学研究科, 助教 (90511775)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | インタラクションモデル / 視座協創 / インタラクション分析 / 共同意図構築 / ヒューマンエージェントインタラクション / 志向姿勢 |
研究実績の概要 |
本年度は、研究課題(1)「能動的に提案を行うエージェントとのインタラクションの分析とモデル化」と研究課題(2)「異なるエキスパートとして協調作業を行うHAIの分析とモデル化」の二つについて、前年度までに得られた知見を組み合わせて評価することに注力した。そのため、(1)において開発された手法を(2)の実験設定に適用する場合と、(2)において得られた知見を(1)の実験設定に適用する場合の二つについて検討を進めた。「重視要因の二層記述に基づく意図を循環的に推定するエージェント」と「連続する一連のタスク間で重視要因が伝搬するエージェント」の二種類のエージェントを実装し、実験的にその効果を確かめた。 また、前年度に新たに明らかになった、「インタラクション参加者の能動性と、取り組んでいるタスクへのコミットメントの両方を高めることが視座協創において必要である」という側面についてさらに踏み込んだ検討を行うことを試みた。そのために、エージェントに対する志向姿勢の誘発という側面から、まず、基本的な人間側のインタラクション姿勢を作る方法を「動的に環境が変化する中でお互いにインタラクションを試みるタスク」を用いて、エージェントに対するインタラクションと人間に対するインタラクションをできるだけ近づけることを目的とした実験を行い、目的指向性に代表される行動原理を相手に伝達しつつも、完全に予想されないよう、時間発展と相手の理解に応じて変化する行動モデルを実装する必要性を確かめた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度は、二つの研究課題の融合を目指して、お互いの実験設定に、お互いの研究課題から得られた知見を適用した。その結果として、マクロな視点とミクロな視点の両側面において、重視要因の相互適応的推定が適用可能であり、それらの影響は暗黙的でありながら、人間の心理状態に大きな影響を与えることが、生理指標計測やアンケート結果を通して明らかになった。また、重視要因同士の依存関係を考慮した、ネットワーク構造を持つ意図推定モデルを構築し、その有用性を確認することができた。これらの結果は、インタラクション分析で一般的な主観的報告や観察のみに頼らずに、生理指標のような客観的指標を利用して分析したことによって明らかになったことである。 また、前年度に追加的に明らかになった、視座協創における重要な側面である「インタラクション参加者の能動性と、取り組んでいるタスクへのコミットメントの両方を高める必要がある」という点についても、タスクの方向性は異なるものの、エージェントの助言を代表とする人間の意思決定の関与を行う場面において、有効な方策を検討することができた。
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今後の研究の推進方策 |
従来研究で構築してきたインタラクションモデルを適用することで、連続的なタスクや複合的なタスクにおいても、視座協創のモデルが有用であることはある程度明らかになってきた。一方で、人間同士の協調作業のように、一人で黙々とやるよりも活発で創造的な作業ができているとは言いがたい。これは本研究課題遂行中に明らかになった「インタラクション参加者の能動性」と「遂行中のタスクへのコミットメント」が低いという部分に影響していると考えられる。最終年度である本年度は、研究課題(1)「能動的に提案を行うエージェントとのインタラクションの分析とモデル化」と研究課題(2)「異なるエキスパートとして協調作業を行うHAIの分析とモデル化」の融合だけでなく、インタラクション参加者の能動性と、取り組んでいるタスクへのコミットメントの両方を高める」という点についても組み込みを進め、活発で創造的な協調作業を助けるエージェントの実現に貢献することを目指す。
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