研究課題/領域番号 |
25870355
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研究種目 |
若手研究(B)
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
遠藤 慧 京都大学, iPS細胞研究所, 特定研究員 (40626074)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 細胞分画 / 細胞識別 / マイクロRNA / microRNA / miRNA / 遺伝子回路 |
研究概要 |
特定の細胞を分画する場合、従来は細胞表面の情報の違いを抗体分子を用いて検出していた。一方、本研究課題では細胞質因子として機能性RNA分子のひとつであるマイクロRNAに注目して、対象の細胞ごとに異なるマイクロRNAの生理活性に基づいて細胞を高精度に識別し、細胞を生きたまま分画する技術の開発に成功した。特に、本研究課題で新たに開発した技術を用いると、2種類の細胞株間にあるマイクロRNA活性の2倍以下程度のごく小さな違いに基づいて細胞を識別できることを発見した。また細胞外刺激による細胞分化にともなって変化するマイクロRNA活性を指標にして、同一の細胞株の細胞質因子の変化を識別、分画が可能であることを示した。さらに、精密にマイクロRNA活性を測定可能な本手法の特徴を応用して、2種類のマイクロRNA機能の相関関係を探索する手法へと発展させている。 これらの研究成果を国内学会や国際的なシンポジウムで発表したほか、主要特許1件と関連特許1件として特許申請をおこなった。特に、国際的なシンポジウムで発表した際には優秀な研究発表として表彰されるなど、本研究の成果は国際的にも高い評価を得ている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
当初の研究計画を上回り、遺伝子回路を構築しなくても高い精度の細胞分画が可能であることを発見した。この発見に注目して研究を進めた結果、新規の細胞分画法として2件の特許を申請するに至った。さらに国際的なシンポジウムで発表した際に優秀な発表として表彰されるなど、既に国際的にも高い評価を得ている。これらのことから、細胞分画法の開発という観点からは当初の計画以上に進展している。 一方で、遺伝子回路を構築するための理論的アプローチについては、基本的な実験系を立ち上げた段階に留まっている。前述の通り、本年度は遺伝子回路を必要としない細胞分画法の確立に注力したため、その後の数理的な解析はやや遅れている。 両者を総合的に判断しても、研究課題は当初の計画以上に進展していると言える。
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今後の研究の推進方策 |
これまでの研究によって遺伝子回路を必要とせずに高精度に細胞を分画する新規技術の開発に成功している。この新規技術を発展させ、より一層の細胞識別、分離能を実現するためには遺伝子回路を構築する必要があると考えられる。今後は遺伝子回路の構築と、その基盤となる理論的アプローチの開発に重点を置いて研究を進める。
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次年度の研究費の使用計画 |
当初の予想を上回り、遺伝子回路を必要とせずに細胞分画できる方法を発見し、その技術を確立するための研究に取り組んだ。その結果、本年度は数理解析の重要性が相対的に低下した。計算機の発展は日進月歩のため、今年度の導入を見送り、必要に応じて当該時期でより性能の高い計算機を導入するべきと判断した。 本年度で遺伝子回路を必要とせずに細胞分画する技術はほぼ完成するに至った。次年度は、この新規技術をより一層の改善を目指して、遺伝子回路の構築を重視するため計算機の導入が必須となった。次年度前半を目処に、適切な機器を選定し導入する予定である。
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