研究課題/領域番号 |
25870357
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研究種目 |
若手研究(B)
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
奈良 禎太 京都大学, 工学(系)研究科(研究院), 助教 (00466442)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | フラクチャー / 岩石 / セメント系材料 / 透過性 / 長期強度 / 温度 / 湿度 |
研究概要 |
地下構造物には長期安定性が不可欠である。また、石油・天然ガスの採掘では、岩盤中のフラクチャー(き裂,破壊)を保つことによる流路の保持が求められる。本研究では、岩質材料(岩石やセメント系材料)内部のフラクチャー進展に及ぼす影響因子を解明するとともに、物理化学反応を利用したフラクチャー修復と開口確保およびその機構を、破壊力学と物理化学に基づいて解明することを目的とする。特に平成25年度は、インタクトな状態での物性に関する情報を取得し、続いて材料内のフラクチャーに関連した試験を行い、フラクチャーが材料特性に及ぼす影響を調べた。また、周辺環境をコントロールした条件下でフラクチャーを進展させる試験を行うことによって、周辺環境条件が材料中のフラクチャーに与える影響を調べた。その結果、フラクチャーの進展速度は、0.01μm/sを下回るような低い速度で生じることが示された。これは、周辺環境を制御した条件下でしか得られない成果である。また、固体材料の透過性に関しても試験を行い、空隙率が高い材料ほど高い透過性を示した。さらに、周辺環境条件(温度や湿度)が灸に変化した場合、材料内部が外部環境と同様のレベルに落ち着くまでの時間に、材料の透過性が大きく影響していることが示された。特に、空隙率が20%を超える多孔質で空隙やフラクチャーを多く含む材料では、瞬間的に材料内部の環境条件が外部と同程度になるのに対し、透過性が低く緻密な材料では、固体内部の条件が外部環境条件と同程度に落ち着くまでに数日を要することが示された。これらの成果は、フラクチャー修復と開口確保に物理化学反応を利用し、長期強度と浸透性を制御する技術を構築する上で極めて重要であり、大きな研究の進展であると考えている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
当初計画していた1か月以上にも及ぶ極めて長い期間をかけて行うフラクチャー進展試験は実現できなかったものの、本研究課題中で行ったフラクチャー進展試験より、高い再現性を持つ低速でのフラクチャー進展速度のデータが得られ、有意義な研究を行うことができた。 また、材料の浸透性に関するデータから、材料内部の状況を理解することができ、物理化学反応と力学作用を組み合わせた技術を構築する上で、極めて意義の高い成果を得られたと考えている。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、X線CTや顕微鏡観察により、材料内部のフラクチャーの状態を視覚的に調べることを主な目的とする。X線CTは内部を非破壊で観察でき、顕微鏡では微視的調査ができるため、フラクチャーの進展や修復、開口保持に及ぼす影響因子の特定に不可欠と言える。また、前年に予定していて実現できなかった超長期にわたるフラクチャー進展試験を行い、超低速のフラクチャー進展を検出することを目的とする。
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次年度の研究費の使用計画 |
当初購入を予定していた環境制御チャンバーについて、本研究の進捗により購入の必要がなくなり、次年度において予定している材料観察のための設備や消耗品、解析ソフト等の購入に回すこととした。 岩石やコンクリートの試料や、顕微鏡設備、画像解析や数値解析ソフトの購入に費用を充てることとしている。 その他、学会発表や論文投稿、別刷等の費用にも充てる予定である。
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