研究課題/領域番号 |
25870362
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
三谷 羊平 京都大学, (連合)農学研究科(研究院), 准教授 (70647172)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | インセンティブ設計 / 森林保全 / フィールド実験 / 実験経済学 / ラボ実験 / 囚人のジレンマゲーム / スタグハントゲーム |
研究実績の概要 |
本研究では、顕示データを用いて森林所有者のインセンティブ政策への参加行動を計量分析し、所有者の行動をよりよく理解した上で、生物多様性保全に適したメカニズムをデザインし、ラボおよびフィールド実験を用いてその効果を検討する。 本年度は、協調行動を高めうる政策スケールを検討すると同時に、ラボ実験による政策評価の欠点といえる外的妥当性の問題を補完するため、愛媛県久万高原町の一般住民を実験協力者としたフィールド実験の結果を分析した。日本において、生物多様性の供給者となっている私有地所有者の多くは、農山村の住民である。日本の農山村には、集落や自治会というつながりの強い社会的ネットワークが構成されており、そのような既存のネットワークを政策に利用できるかは効率上重要かつ経済学における最先端の課題といえる。 フィールド実験は、23の自治会から101世帯の協力を得て訪問型フィールド実験として実施された。調査員の説明の後、金銭的インセンティブが課された囚人のジレンマゲームとスタグハントゲームを行った。実験群(コミュニティマッチング)では、被験者は実験ゲームの相手が同じ自治会の住民であることを理解している一方で、対照群(ランダムマッチング)では、被験者は実験ゲームの相手が他の自治会に属する久万高原町の住民であるということを理解している。 実験結果からは、 農山村における自治会のような既存の社会的ネットワークの利用が協力や協調を高めることが確認された。同じ自治会の住民からなるグループにおける協力率の方が、異なる自治会の住民からなるグループにおける協力率よりも高い。久万高原町における住民を対象としたフィールド実験では、全体で協力率と協調率が共に約90%と極めて高かった。大学生を被験者とした実験室実験における協力率は約25%、協調率は約40%であり、フィールドとラボ実験とで大きな乖離が観察された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
これまでの実験データに関する分析は順調に進んでいる。また、これまでの成果の発表や出版に関してもほぼ予定通りである。しかし、今年度は共同研究者との打合せをもとに新たな経済実験の実施を予定していたが、共同研究者が急な異動のため多忙となり、先方の都合で調整がつかず、次年度に実施せざる得ないこととなった。実施予定である実験計画に関して、今年度は文献レビューと実験計画の検討をより綿密に行うことで、次年度に行う実験実施の準備を整えた。
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今後の研究の推進方策 |
来年度は、最終年度となる。申請時の計画を達成するように、今後の研究を推進する。特に、最後の経済実験に関しては、共同研究者と共に十分な準備を進め、年度の前半に実施する予定である。後半は、その分析や、全体的な成果の整理を進める。結果に関しては、国内外の大学にて積極的にセミナー報告等を行い、論文の改訂を進める。
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次年度使用額が生じた理由 |
今年度は、実験計画に関する共同研究者との打合せの後、経済実験の実施を予定していた。しかし、共同研究者が急な異動のため多忙となり、今年度中での実施のため日程調整を行ったが地理的な要因などもあり先方の都合でどうしても調整がつかず、十分に準備をした上で、次年度に実施することとなった。
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次年度使用額の使用計画 |
今年度は文献のレビューと実験計画の検討をより綿密に行うことで、実験実施の準備を整えた。最終年度前半に実験を行う予定である。共同研究者との打合せに必要となる旅費、経済実験の実施準備と実施に必要な経費、結果に関する議論や成果の報告に必要となる旅費に使用する。
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