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2013 年度 実施状況報告書

DDS応用を目的とした生体分子応答性ナノコンポジットの開発

研究課題

研究課題/領域番号 25870366
研究種目

若手研究(B)

研究機関京都大学

研究代表者

橋田 泰彦  京都大学, 物質-細胞統合システム拠点, 研究員 (30512462)

研究期間 (年度) 2013-04-01 – 2015-03-31
キーワードカーボンナノチューブ / ペプチド / ドラッグデリバリー / 酸化還元酵素 / 分子応答性 / 薬剤放出
研究概要

25年度は、ジスルフィド結合の還元切断を簡便に評価するための評価系を確立するとともに、酸化還元酵素によるジスルフィド結合切断のための予備的検討を行った。
単層カーボンナノチューブ(SWCNT)を、システイン残基(Cys)を含むペプチドと含まないペプチドを1:9の割合で含むペプチド水溶液中で超音波処理することにより、Cys由来のSH基をその表面に有するSWCNT-ペプチド複合体を得た。その表面SH基を2-[(5-Fluoresceinyl)aminocarbonyl]ethyl Methanethiosulfonateを用いて標識することにより、ジスルフィド結合を介してフルオレセイン標識されたSWCNT-ペプチド複合体の合成に成功した。蛍光スペクトル測定を行ったところ、490nmの励起光によって512nmにピークを持つフルオレセインに特徴的な発光スペクトルが観察された。しかしながら、その蛍光強度はフルオレセインと比較して非常に弱く、またTris(2-carboxyethyl)phosphine Hydrochloride (TCEP)によってジスルフィド結合を還元切断することによりその蛍光強度が顕著に回復したことから、SWCNTによってフルオレセインが消光されていると考えられた。その消光効率は90%以上であり、この現象を利用してジスルフィド結合の還元切断を評価することが可能であることが示唆された。
次に、SWCNT-ペプチド複合体表面にグルコースオキシダーゼ(GOD)を固定化し、GODの酵素反応で得られる電子を用いたジスルフィド結合の還元切断を試みた。架橋剤SMCCを用いてGOD表面のアミノ基にマレイミド基を導入し、これをSWCNT-ペプチド複合体表面のSH基と反応させることによりGODを固定化することに成功した。これにグルコースを添加し、ジスルフィド結合の切断に伴うフルオレセインの蛍光回復が見られるかどうかを確認した。しかしながら、明確な蛍光回復は確認できず、GODの固定化方法や固定化量等の検討が必要であると考えられた。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

25年度は、単層カーボンナノチューブ (SWCNT)-ペプチド複合体表面のジスルフィド結合の還元切断を蛍光プローブを用いて簡便に評価するための評価系の確立と、グルコースオキシダーゼ (GOD) の酵素反応を利用したジスルフィド結合の還元切断に取り組む計画であった。
ジスルフィド結合切断の評価系確立は順調に進み、切断を蛍光シグナルとして検出できる測定系を確立することに成功した。本評価法において、SWCNT-ペプチド複合体に固定化されたフルオレセインは、その蛍光が90%以上消光されており、ジスルフィド結合の開裂によってSWCNT表面から放出されることにより、顕著に蛍光強度が回復することを確認した。この現象を利用することにより、好感度にジスルフィド結合の切断を検出することが出来るため、本成果は今後の研究推進を考えるうえで非常に重要な成果であると言える。
もう一つの課題として挙げていた酵素反応を利用したジスルフィド結合の還元切断は、現在のところ成功してはいない。これについてはSWCNTへのGODの固定化方法が最適化されていないために電子伝達効率が十分でないことが原因であると考えており、これは当初の研究計画の想定内である。現在は、GODの固定化方法としてSMCCを架橋剤として用いた方法のみを検討しているが、今後は当初の計画通り、異なる架橋剤の使用やGODの活性中心に存在するFADを介した固定化などの方法を検討する予定である。以上の理由から、研究は概ね順調に進行していると言える。

今後の研究の推進方策

本研究の研究計画において残された課題は、GODの酵素反応によって得られる電子を利用したジスルフィド結合の還元切断を達成することである。現時点ではこれを達成することは出来ていないが、その原因としてGODからジスルフィド結合までの電子移動効率が悪いことが考えられ、今後はその改善を中心に行う。具体的には、GODの固定化方法の検討を行う。現在採用しているGODの固定化方法は、SMCCを架橋剤とした方法であるが、架橋剤の化学構造やその長さによって電子移動効率が変化することが予想されるため、様々な構造の異なる架橋剤の使用を試みる。また、GODの酸化還元反応には、その活性中心に存在するFADが重要な役割を果たしており、このFADとSWCNT-ペプチド複合体を直接共有結合で繋ぐことにより高い電子移動効率が期待できると考えている。これを実現するために、FAD誘導体の合成を計画しており、その準備も進めている。これらの改善策を検討したうえでもジスルフィドの還元切断が達成できない場合は、電子メディエーターの利用を検討することも考えている。
ジスルフィド結合の切断が達成された後は、その評価を行う予定である。本研究ではGODの基質としてグルコースを用いるが、グルコースにはそのアルデヒド基に由来する還元能を有するため、確かに酵素を経由して電子移動が行われていることを証明する必要がある。これは、ジスルフィド結合切断速度のグルコース濃度依存性を評価することによって証明できると考えている。ジスルフィド結合の切断はGODの電子供給に依存しているため、その速度はグルコース濃度に対してGODと同様に飽和型の濃度依存性を示すはずである。これを確認することによって、GODを経由した電子供給がジスルフィド結合切断に寄与していることを証明する。

次年度の研究費の使用計画

当初の研究計画では、FAD誘導体としてN6-(2-aminoethyl)-FADをA. Buckmannらの方法(1997, Methods in enzymology, 360-374)で行う予定であった。しかし、その合成に必要なエチレンイミンは反応性が非常に高く国内での流通が許可されていないため、入手不可能であることが分かった。このためFAD誘導体として代替物を利用することになり、その検討と合成法の調査のために当初は25年度に行う予定であった合成が26年度にずれ込むこととなった。これに伴い合成に必要な試薬の購入費用を26年度に繰り越すことにしたため。
繰り越した助成金は、当初の予定通りFAD誘導体の合成に用いる予定である。FAD誘導体として、8-(6-aminoheylamino)-FADを合成する予定であり、その合成にはI. Trayerらの方法(1974, Biochem. J. 139, 609-623)を用いる予定である。合成に必要な試薬は計画変更前と大幅に異なるが、研究遂行に必要な合成量は同じ予算規模で達成可能であると考えている。この合成は26年度に執り行う。

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公開日: 2015-05-28  

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