研究課題/領域番号 |
25870368
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研究種目 |
若手研究(B)
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
齋藤 亜矢 京都大学, 野生動物研究センター, 助教 (10571432)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 描画 / 視線 |
研究概要 |
デッサン時や模写時における周辺視野の役割と概念の解体との関わりを解明するため。本年度は、おもに図形模写時の視野範囲の測定方法を検討した。これまでに研究協力者らと開発してきた液晶タブレットとアイトラッカーによる描線・視線同時記録システムをもちいて、計測した予備実験のデータを解析した。デッサンの熟練者では、注視点の動きがより細かく、描線位置やモデルの対応位置を直視する時間が少ない傾向があることを確認した。アイトラッカーで測定できるのは注視点のみであるが、視野範囲だけでなく、微細な動きに違いがみとめられた。そのためより高周波数のアイトラッカーをもちいれば、注視点の微細な運動(固視微動)から、周辺視野に注意を向けて全体的に見ている(ソフトアイ)のか、注視点に集中して部分的に見ているのかを検出できる可能性が示唆された。 また本研究は、前年度までに助成を受けた研究「絵を描くことの認知的な基盤とその発達」を発展させる形でおこなっている。本年度、これまでに得られた成果をまとめ、岩波科学ライブラリーに一般向けの著書を執筆して出版した。またチンパンジーなどの大型類人猿でも描画が自己報酬的におこなわれることから、同じように自己報酬的に発生する行動としての物遊びに着目した実験も実施した。58個体のチンパンジーおよび、同じく大型類人猿であるボノボ4個体を対象に、通常の飼育環境のなかに新奇物を導入し、物に対する自発的な行動を観察した。かれらが新奇物に対して積極的に探索行動をおこない、そこから多様な物の操作や遊び、実用的な使用に発展する様子が観察された。現在その詳細なプロセスについての解析を進めており、描画行動との相違について考察を進めている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
計画どおりでない部分もあるが、予備実験から示唆された傾向から、研究目的を達成するためのより効果的な方法を検討することができた。また交付申請書にも記したように、本研究は「描くことの進化・発達的起源およびその認知的な基盤」についてのこれまでの研究を発展するものである。計画にはなかったが、大型類人猿の自発的かつ自己報酬的な物の操作に関する研究もおこない、絵を描くことへの動機づけの観点からも考察を深めることができた。
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今後の研究の推進方策 |
共同研究者の協力のもと、描画模写時の視野範囲とその動態について、固視微動を考慮して解析する方法をさらに検討し、実験協力者を集めて本実験をおこなう。また画面上で中心視野・周辺視野のそれぞれの視野範囲に制限を与えた条件で、刺激図形を模写する課題のためのシステムの開発も進める。また本年度に実施した「チンパンジーおよびボノボの新奇物に対する自発的な行動」についての実験でおこなったデータの解析をすすめる。探索的な物の操作から、遊びや実用的な物の使用に至るまでのプロセスの解析をすすめ、描画行動と比較することで、ヒトが描くことの動機づけについての考察をおこなう。
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次年度の研究費の使用計画 |
予備実験のデータを検討した結果、計画していた方法より効果的な測定方法を導入することにした。そのため予定していた本実験を次年度に持ち越したため、謝金等の必要経費や旅費などに使用する分を繰り越した。 計画していた本実験をおこなうための必要経費や旅費とする。
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