研究課題/領域番号 |
25870368
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研究機関 | 中部学院大学 |
研究代表者 |
齋藤 亜矢 中部学院大学, 公私立大学の部局等, 准教授 (10571432)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 描画 / 自己報酬性 / 物の操作 / 表象 |
研究実績の概要 |
本研究は、前回採択課題「絵を描くことの認知的な基盤とその発達」を発展させる形でおこなっており、これまでのチンパンジーとヒト幼児の描画行動に関する研究成果をまとめた論文が刊行された。またチンパンジーの描画行動が自己報酬的におこなわれることから、その動機づけ、つまり「おもしろさ」の性質について検証するために、昨年度おこなった物遊び実験の解析をすすめた。京都大学熊本サンクチュアリの58個体のチンパンジーおよび、同じく大型類人猿であるボノボ4個体を対象に、通常の飼育環境のなかに新奇物を導入し、物に対する自発的な行動を観察したものである。チンパンジーの物の操作が、①物の形状に依存しない探索的な操作から、②物の形状に依存した探索的な操作、物と物とを組み合わせた操作に進むことがあきらかになった。同じ行動の繰り返しや、長時間の持ち運びが見られたケースも多く、これらを「おもしろさ」の指標としての分析も進めている。ベッド作りなどの実用的な使用のほか、デッキブラシで地面をこするなどの模倣的な物の操作、ブラシを筆に見立てて紙の上をこするなどのふり遊びも観察された。これらの観察から、チンパンジーが、新奇物に対して、物がアフォードする行動を自己強化的に試そうとすることが明らかになった。また同じ操作を別の物に繰り返すケースもあり、操作の可能性を試すなかで物の特性を理解していることが示唆された。同じ操作を別の物にあてはめるという行為は、物を用途別に分類すること、すなわち物の表象化ともかかわる。今後さらなる解析をおこない、表象の成立や描画行動との関わりについて考察をすすめる予定である。描画模写時の視線と描線の推移の関係については、これまでの実験から得られたデータの解析をすすめている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
描画の認知的な基盤についての研究成果の発表や、大型類人猿の自発的な物の操作(物遊び)に関する実験の解析については、交付申請書に示された以上の新たな知見が得られている。描画の原初的な動機づけや表象の成立との関わりについて、新たな視点からの議論につながるものである。いっぽうで、周辺視野の測定のために、固視微動の指標である注視点の微細な動きの測定を試みる予定であったが、代表者が昨年度異動したこともあり、そのために必要な高性能のアイトラッカーの借用予定が変更になったため、計画どおりにすすめめられなかった部分もある。
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今後の研究の推進方策 |
共同研究者の協力のもと、描画模写時の視野範囲とその動態について、固視微動を考慮して解析する方法を完成する。実験協力者を集めてその方法をもちいた実験をおこない、データを分析する。写実的な描画をおこなうときの視線と描線の関係についてまとめ、その認知的なプロセスを考察する。またチンパンジーの自発的な物の操作についての解析もすすめ、描画の動機づけや表象の成立との関わりについて考察を深める。これらの成果について、学会や論文等での発表をおこなう。
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次年度使用額が生じた理由 |
これまでの研究成果をまとめる過程で、既存のデータの新たな解析の必要性がでてきたこと、また今年度代表者が異動したことで、高性能のアイトラッカーの借用予定が変更になったため、当初予定していた模写時の視線の固視微動の計測に関する実験の実施が遅れている。そのため、これらの実験に関わる旅費、人件費、機器の調整等の経費が今年度はあまり発生しなかった。
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次年度使用額の使用計画 |
予定していた実験の実施と解析のために、機器の購入や旅費、人件費等の経費として使用する。学会発表の旅費や、論文執筆のための経費としても使用する予定である。また描画の認知的な基盤について、写実的な絵が描かれている先史時代のロックアートでは作者の視線の移動がどのようにおこなわれていたのか、描線からの再現方法を検討するために見学調査も検討しており、その旅費にも使用する予定である。
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備考 |
京都大学霊長類研究所のホームページに掲載された
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